北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2415】Domaine Chauvenet-Chopin Nuits-Saint-Georges 1er Cru 2015

 
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ オー アルジーア 2013ショーヴネ ショパン
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
このワインは2022年の夏頃に比較的安い価格で購入できたニュイ・サンジョルジュの赤。メーカーのショーヴネ・ショパンは知らないところだし、いまどきにしては格安だったので期待はできない。それでもヴィンテージは2015年なのであまりひどい作りにはならないといいなぁと思いながらの抜栓。
 
まず見た目。先日のジャック・カシューのオート・コート・ド・ニュイに比べるとかなり赤茶色寄りの色をしていて、ブルゴーニュとしては暗いかもだけど、あちらよりはずっと明るくルビーっぽい輝きもみられる。香りは……! チョコレートとこんもりした森の霧のような予感、米屋さんの香り、それからアセロラの予感もある。自分のよく知っているブルゴーニュ赤、それもアタリを掴んだ時の香りはこんなやつだと思う。
 
口に運んでみると、かなり甘味先行でちょっとびっくりする。そこから分厚いタンニンのがさがさ感とカフェオレぐらいの穏やかなコクが押し寄せてくる。このあたり、ピントが合ってくれば旨くなってくれるかもしれない。けれども味のひとつひとつの要素は自分の知っているブルゴーニュ赤であり、適度なチョコレートと米屋さんの香りも自分が飲む範囲のニュイ・サンジョルジュにありそうな雰囲気。そうだ、ロベール・シュヴィヨンのニュイ・サンジョルジュではしばしば米屋・米の香りがよぎったのだった。二杯目に入ったぐらいで甘味やタンニンやカフェオレがだんだん真ん中に寄ってきて、香水みが少しずつ加わってきた。初手から香水っぽいと引いてしまうけれども、これは後から少しずつ香水&バラがせりあがってきて、展開として気持ち良く納得できる感がある。これはハッピー。お値打ち品でも立派なもの。ジャック・カシューの赤と比較すると、こちらのほうが自分の知っているブルゴーニュ赤っぽさ、ピノ・ノワールらしさがあって好ましく感じられる。あちらはあちらで濃い赤ワインとして合格ではあるけど、なんか自分が期待する向きとは違い過ぎていて好きだと素直に言えない感じなのだ。こちらは素直に好きなワイン。ニュイ・サンジョルジュとしては軽いという人もいるかもだけど、こういうのが好み。
 
※翌日。さらにジャック・カシューの残りものとも比較すると、やはりこちらのほうが軽い。でもこっちのほうがエレガントじゃないかとも。ワインに期待するもの次第で、どちらに軍配をあげるかは変わりそうだけど、親しみをおぼえるのは断然こちらだった。
 

【2414】J.Cacheux et Fils Bourgogne Hautes Cotes de Nuits Rouge Bec a Vent 2018

 
ドメーヌ・ジャック・カシュー ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ ベック・ア・ヴァン [2018]
 
まず見た目。うっ……濃いぞ、ブルゴーニュの赤ワインにあるまじき色をしている。やや青紫色がかっていて、不透明で、ひたすら濃い。光にかざしてもルビー色に輝く度合いは低い。この見た目からブルゴーニュ産のピノ・ノワールと連想するのはたぶん無理。
 
香りは悪くない。こしあんのような甘い香りと甘酸っぱそうな香り、それから杉と香料だ。既知のワインでは、このときのアンヌ・グロの品をもう少しくだけた雰囲気にしたらこんなワインになるかもしれない。味は見た目や香りどおり、とにかく濃くて、どろっとしていて、こしあんの香りにふさわしいざらつきがあって、タンニンはピノ・ノワールとしてはかなりのものだ。ワインの体格はでかぶつで、ジュヴレ・シャンベルタンには遠く及ばないにしても、テナーの利いた末広がりな飲み心地がちょっとだけあるかもしれない。生臭くないカシスリキュールみたいな飲み心地と、香料と仲良しと感じられる酸味&甘みは結構飲ませてくれる。一瞬、醤油のような香りと塩っぽさを連想する場面もあった。まさかね。
 
で、このワインはいったいどういうワインなんだろう。確かに美味いし多角的なワインかもしれないけれど、ピノ・ノワール「らしさ」がわからない。ブラインドテイスティングでこれをピノ・ノワールとわからなくてもしようがないと思う。酸味と甘みからは、できの良いカベルネフランを、醤油のような香りからはテンプラリージョを想像したりもする。ああそうだ、それでいえば2011年に飲んだロワール産のピノ・ノワールにも似ているかもしれない。あれよりこっちのほうが複雑だけど、魅力の方向性は似ている。あとになって、2022年にも同じ銘柄のヴィンテージ違いと対峙していることが判明したけど、そのときもカベルネフランを連想していたようだ。
 
※翌日、ちょっと飲んでみる。昨日に比べると風味が少し穏やかになった。でかぶつじゃない。でもこれぐらい穏やかなほうが好みではある。世間的には初日のでかぶつ感のほうがウケると思うけれどもいかに?
 
※三日目。あまり値段の高くないニュイ・サンジョルジュ一級と比較してもこっちのほうが濃く、それと比較すると香料っぽさは歴然としている。味が濃いだけでなく、香料の香りがより重たくなったようにも思う。自分の好みではないけれども首尾一貫した特徴があり、そういうワインが好みの人にはお勧めできるかも。
 

【2413】Domaine Herve Charlopin Marsannay Les Longeroies 2020

 
マルサネ・レ・ロンジュロワ[2020]年 ドメーヌ・エルヴェ・シャルロパン
 
このワインは、ブルゴーニュの中核エリア、コート・ドールのなかでも北部エリアのアペラシオンのひとつ、マルサネの品。マルサネは栄えあるコート・ドールの序列のなかでは下から数えたほうが早いけれども、コート・ドール全体が高騰していているなか、少しずつ値段が高くなっているし、考えさせられるワインがつくられることもある。で、このワインは2600円ほどのかなりお値打ち品で、しかも畑の名前がロンジュロワ。ロンジュロワは、一級のないマルサネにあって将来の一級候補と目される注目エリア。にもかかわらずこの価格は何かバランスの悪さがあるのかもだけど、飲まないわけにはいかない。やってみましょう。
 
グラスに注ぐ段から、このワインはちょっと紫色がかった、それかピンク色がかったような色彩を帯びていて、なんじゃこれはピノ・ノワールじゃなくてガメイかね? と思ってしまう。グラスに注ぐと赤茶色にみえるのだけど、注いでいる最中はそうではなかった。先日の平格ブルゴーニュ赤とは明らかにカラースペクトルが違っている。甘酸っぱい香りとこしあんみたいなザラっとした甘い香り、バラのような香水のかすかな香りで、いや、おいしそうだぞ? 苔むしたニュアンスまであるじゃないか。
 
口に運んでみると、酸味が先立ち、そのあとからコクが追いかけてくるような。最近のブルゴーニュ赤のなかではクラシックな、かつて「アセロラっぽい」と比喩したような酸っぱさが目立つのだけど、にもかかわらずバターみたいな厚みがあり、独特の風味になっている。そのバターは、樽の風味に由来しているのか、それともここのワイン自体がそういうものなのか。どっちにしても、こういうワインは肉料理に合うんじゃないかと、ポークソテーと一緒にいただくと、樽の風味? というか木っぽい風味が目立ってくる。もしかしてこのワイン、木チップを使っているのかな? とはいえ基本的には悪いワインじゃない。シルヴァン・パタイユのマルサネなど品に及ばないけれども、ほんのりバラの香水のような風味があるのも、今までに出会ったマルサネに通じるものがあって良い。
 
※翌日は、滋養のしっかりした、同じコート・ドールのワインでいえばモンテリみたいなワインになった。モンテリもブルゴーニュ赤のワインでは格が高くないけれども、それはトーンの高い七色の香りを出してくるポテンシャルを感じさせないからでしかなく、一般的には飲み吟醸、大変おいしくいただいた。してみれば、結構狙いどころの品かもしれない。
 

【2412】Paul Jaboulet Aine Syrah 2019

 
ポール ジャブレ エネ シラー 2019
 
このワインは、ローヌ地方でお買い得ではないかと目をつけている、ポール・ジャヴレ・エネのシラー。このメーカーの赤ワインでシラーが最安だったかは覚えていないけれども、エントリークラスなのは間違いない。とはいえ、エントリークラスならヴィンテージの若い2019でもなんとかならないだろうか。そう思いながらの抜栓。
 
間違ってブルゴーニュ用グラスに注いでしまったけれども、もう面倒だからそのまま飲んでしまうことに。見た目は黒々としていて、さすがにピノ・ノワールなどとは濃さの水準がまったく違う。香りは、ブルゴーニュグラスで確認すると、あまりローヌっぽい香りがこない。
 
口に含んでみると、初手はやさしい赤かなと思いきや、すんごいタンニンとカフェオレみたいな風味がこみ上げてきた。肉厚でコクがあり、後味にまでタンニンがついてくる。そのせいか、のどをとおる時には(甘味の少ない)シロップめいている。甘味は控えめで引き締まった印象を受ける。さあ、明日以降どうなるだろうか。
 
※翌日は引き締まった感じより、果実味に対してタンニンとコクが際立つ感じで、ちょっとスカスカした印象を受ける。でも、これを飲み切るのは無理なので三日目へ。
 
※三日目はそこまでスカスカした印象を受けなくなった。ちょっとトマトスープっぽいかもしれないけれども、これはひいき目かも。
 
 

【2411】Teresa Raiz Ribolla Gialla Friuri Colli Orientali 2020

 
テレザ・ライツ リボッラ・ジャッラ
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
このワインは、イタリア北東部のワインメーカーとしては比較的廉価な部類になったテレザ・ライツの白ワイン。品種はリボッラ・ジャッラで土着品種、これをワカサギの天ぷらなどと一緒にやってみることにした。この作り手のリボッラ・ジャッラを飲んだのはもう9年ほど昔、2013年にまでさかのぼる。久しぶりの対峙、どんな姿をみせてくれるだろう?
 
さあ、まずグラスに注いでみよう。色合いは、やや薄い麦わら色で、この見た目だけでは多くの白ワイン系品種と区別つきそうにない。香りは初手から素敵だ。甘い蜂蜜とクッキー。樽か?バニラか?シャルドネか? といった感じ。でもそれが嫌味な感じにならず、ほんの少しムルソー的なシャルドネを連想するのはご立派。
 
口に運んでみると、ここでシャルドネとの違いがくっきりする。もっと潤いがあり、フリウラーノなどに通じる薬草っぽさもあって、口のなかでピノ・グリやヴィオニエのように膨張する。チリ産のシャルドネのようにフルーティーな感じでなく、もっと緑色というか植物的な連想をさせる酸味だ。その酸味にもクッキーやナッツの風味が伴い、香りにも炒ったピーナッツのような雰囲気さえ感じられる。前回2013年に飲んだ時に比べると、シャルドネっぽくないと感じるし酸味がそこまで際立っていると感じない。これはヴィンテージによるのか、それともテレザ・ライツが作風を変えてきたのか、ちょっとわからない。でも、こっちのほうがいいと思う。ナッツの風味の漂う白ワインも良いものだからだ。
 
※翌日。ナッツのニュアンスは初日に比べれば衰えて、ちょっと普通のワインっぽくなった。それでもまだナッツは残っているし潤いと植物的な連想は健在、結構楽しめる。
 

【2410】Doudet-Naudin Bourgogne Pinot Noir 2019

 
ドゥデ・ノーダン ブルゴーニュ ピノ・ノワール [2019]
 
ブルゴーニュ高騰のおり、強い味方と感じられるのが、だいたい1万円ちょいぐらいで詰め合わせセットになっている、各社のブルゴーニュ赤セット。この価格帯のブルゴーニュ赤は比較的値上がりしていない一方で品質は底上げされていて、1万円ちょいぐらいのセットでも各メーカーの顔つきの違いが結構わかるので、舌を鍛えるにも良し、おいしく飲むにも良しだと思う。今回、そのセットにまぎれこんでいたまったく知らないメーカーのワインとやってみることになった。
 
まず見た目。ブルゴーニュの赤にしては濃いほうで、紫色がかっておらず、僅かに茶色側の色あいをしている。香りは……なんだろう、これは。メルローから連想されるような、野菜系の香りが思い浮かぶ。そんなバカな。もちろんメルローの一部にありがちなピーマン臭ほどではないけれども。黒系果実の香りだってあるけれども、なおも野菜系の香りが残る。はっきり野菜系だ。こんなブルゴーニュ赤ワイン、あまりないぞ。
 
口をつけてみると、なんだこれは。どろどろと濃く、えぐみがある。これってピノ・ノワール? いや、まあ、そうかもしれないけれどもやけに濃いな、本当は違う品種なんじゃないの? と思ったりもする。いつぞやのマランジュ一級に似ていて、これも上物のシラーっぽいといえばそうかもしれない。シラーシラー言いながら飲んでいるうちに、濃い飲み口、その後味に香料のような飲み心地とトマトスープのような一層野菜っぽい風味が宿るようにもなってきた。本当にブルゴーニュワインっぽくないな! 後味の旨味と香りはなかなかのもので、舌がざらつく感じも良いっちゃ良いのだけど、ブルゴーニュ赤らしいワインとは言えない。ブラインドテイスティングだったら、これ何って答えるだろう? そう思いながら改めて液面を眺めれば、ルビー色に輝いているようにもみえ、一応ピノ・ノワールなんだろうと思いたくなる。でもブラインドだったら混乱して、最後に「メルロー主体のスーパータスカン!」とかわけのわからないことを言って、ラベルをみてうなだれると思われた。
 
そうやってつべこべ言いながら飲むうち、ピノ・ノワールらしい、さっぱりとした果実が濃さの向こうからおずおずと顔を出してきた。こうなると俄かにピノ・ノワール、それもニュイ・サンジョルジュの子分みたいな雰囲気になって旨味も良い。逆に考えてみる。自分は、こういうタイプのブルゴーニュ赤を他品種と早とちりしやすいのかもしれない。しまいにはバラ系の香水みたいな風味まで宿るようになってきた。気が付けばすっかり満足。
 
※翌日になると、果実味の濃さが引っ込んでしまい、苦みが目立つ展開となった。昨日の後半は重たいなりにバランスのとれた構成だったけれども、今日はそこまで至らず。ワインのバランスとは、微妙なものなんだなぁと改めて確認。