北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【1653】Domaine Marquis d'Angerville Volnay Caillerets 2011

 
ドメーヌ・マルキ・ダンジェルヴィーユ / ヴォルネイ・カイユレ [2011]
 
 この十年ぐらいで、ブルゴーニュの赤ワインは信じられないほど値上がりして、このヴォルネ地区のワインですら例外ではなくなった。この、ダンジェルヴィーユさん家の一級畑は定点観測ワインとして購入し続けたかったけれども、価格や入手難易度などの理由から諦めてしまった。(以前の対戦記録は、2010とか2007など) こいつは最後の生き残りで、年はあまり冴えないっぽい2011。本来ならもっと寝かせて飲むべきものだろうけれど、このヴィンテージだからと言い訳して抜栓してしまった。
 
 まず色。すごく薄くて透明感満点の、朱色に近いワインレッド。「これぞヴォルネ!」というイメージどおりの、一部の濃いロゼワインに迫るような色の薄さ。香りは、初手からミルクチョコレートが目立ち、そこに森の下草、ローソクが加わるような。それほど悪くはないけれども突出しているでもない。
 
 口をつけると、ほんのりとした口当たりに、ミルキーな甘さと適度なコク、果実味は意外と中庸でアセロラなどは連想せず、黒果実と赤果実の中間ぐらいの風味。でもって、とにかく軽量級のワインで重さというものが「無い」。飲み心地にコクがあり、タンニンも意外としっとりしているんだけど、とにかく飲み心地が軽い。軽いからペラペラかといったら全くそんなことはなくて、飲み応えがあって、果実味の自己主張もしっかりしていて、とにかく気持ちの良い軽い場所で焦点を合わせてきている感じがする。2010の記録を読んで思い出すと、この2011のほうがはっきりと軽いところでピントが合っていて、自分の好みなテイストだと感じる。というか、早飲みを許すタイプなんだろうか?
 
 そうこうするうちに、ワインに精気が宿ってきた。ブルゴーニュのワイン広しといえども、この精気がビリビリ感じられるワインはそう多くない。そして、ダンジェルヴィーユのワインに心惹かれた一番の理由も、この精気だったのだった。ヴォルネには、他にもおいしいワインを作る家があるけれども、この精気はやっぱりダントツ。猫柳や桜の枝を引きちぎった時に枝から感じられるような、あの凄いやつがワインに宿っている。軽いはずのワインにドスの強さが宿ってきて、濃厚なジャムのような姿や、蜂蜜のような姿もみせてくる。軽いけれども恐ろしいパワーだ、オフヴィンテージなのに、なんだこれは! もう、夢中になって飲むしかない。そうか、この凄みにかつての自分は惚れ込んでいたのかと思い出せた。こんなに凄いドメーヌだったっけか。うーん、また買いたいけれども価格が……。