北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【1819】Chateau Toutigeac Bordeaux 2016

 
シャトー トゥチジャック 2016 ボルドー
 
 このワインは、見たことのないボルドーのワイン。地域が「ボルドー」としかないので、ボルドージェネリックな赤ワインとみた。けれども安ボルドーには安ボルドーなりの良さってやつがあるから、それを期待したいところ。
 
 まず色調。ブラッドに赤黒い。あまり青紫方面にカラースペクトルが流れるでもなく、ボルドーの赤としてそんなに違和感はない。透明度は低い。
 
 香りは、抜栓した直後にチョコレートが香ったような気がしたけれども、じきに目立たなくなり、苔むしたような、意外にオーガニック方面な匂いがしてきた。なんだこれは?
 
 けれども口に入れてみるとすっきり。煙突っぽい煙たさとビターチョコレート、それからミルクっぽい口当たり。甘さに溺れすぎない落ち着いたたたずまいの、やや禁欲的ではあっても鎮静効果のあるようなワイン。黒鉛のような気配に、ほんのりと果実味が差し込むけれども、主張し過ぎないところが本当にいい。享楽に流れることのないぴしっとした飲み心地は、安ボルドーならではのもの。こういう禁欲的なワインを5000円、10000円払って飲みたいとは思わないけれども、この価格帯でこれが飲めるのは嬉しい。新世界のカベルネメルロー系ではなく、フランスワインに期待したいものがこの値段でもちゃんと宿っている。ワイン慣れしていない人にはただの痩せたつまらないワインかもしれないけれども、享楽的なワインに目をグルグルさせている時にはこういうワインも必要だと思う。いぶし銀。
 
 ※二日目はもうちょっと酸味が勝って、そのぶんトマトっぽい果実味に流れた感じはあった。とはいえボルドーの安ワインの長所を失うほど変わってしまったわけでなく、持ち味がキープされていたと思う。安ボルドーの魅力なんていう、わけのわからないものを知りたい人は、これいいんじゃないだろうか。ただ、安ボルドーの魅力ってのは世間一般のワインに期待される魅力(果実味の豊かさとか、味の太さとか、香りのバリエーションとか)とは方向性が違うので、そのあたりはご留意を。