北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2434】Domaine Faiveley Mercurey Vieilles Vignes 2020

 

 
この品は、メルキュレという地域でつくられた、いわばブルゴーニュの赤ワインでは傍系とされる品。本家本元のブルゴーニュといえばコート・ドール地区で作られたワインであり、それはヴォーヌ・ロマネであれジュヴレ・シャンベルタンであれ、果てしなく値上がりしている。対して、このメルキュレが属しているのはコート・シャロネーズ地区。こちらはコート・ドール産の本家筋ほど値上がりしていない。本家筋の特級や一級に伍するほどのワインはあまりないけれども、現在のブルゴーニュ赤のなかではお買い得で、このフェヴレのメルキュレはそのなかで信頼できる筋だったりする。
 
グラスに注いでみると、意外に紫色をしていて、えっ? なんでこんなに濃厚なの? とびっくりする。濃い色のワインとしていつも思い出すジャック・カシューのオート・コート・ド・ニュイほどじゃないけど、赤くて淡い色のピノ・ノワールという趣ではない。しかし香りをかぐと背筋が伸びる。ふんわり甘い香りに、森の切り株みたいなやつ。フェヴレ・メルキュレでさんざん味わったあの香りがこのワインにも宿っている。
 
口に運ぶと、香りに比べて背筋のしっかりした、甘酸っぱい酸味が目の冴えるようなワイン。以前、このワインを特級であるクロ・サン・ドニのアグレッサー役に使った時も、神経の細かさでは負けていても森っぽい風味では長所をみせ、個性のなんたるかを教えてくれたけれど、今回も安定のつくり、甘酸っぱさと森っぽさに適度な苦みを帯びているのも似つかわしく、このクラスのワインとしてはよくできている。食前におやつとして出てきたサツマイモのフライと一緒にやると、サツマイモの甘さを上書きするように、このワインの甘酸っぱさが炸裂してこれがまた美味い。
 
惜しむらくは価格上昇で、かつては2000円台で手に入ったものがとうとう3600円まで値上がりしてしまった。こうなると、メルキュレとしてではなく、コート・ドール産のフォーマルな平格ブルゴーニュ赤(いわゆるブルゴーニュ・ルージュ)が仮想敵になるけれども、これより大したことのない平格ブルゴーニュ赤はいくらでもあると思う。むしろこのワインは下手に特級や一級のモドキになろうとしていないぶん、割り切った美味さがあるのも良い。今後も値上がりは避けられないだろう。個性のしっかりしたブルゴーニュ傍系のワインだと思う。
 
※翌日も森の香りがしっかりしていて、このワインらしさがしっかりと感じられる。ブルゴーニュ赤系統に何を求めるのか次第かもしれないけれども、私はとても好きです。