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北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

北極の葡萄園、二年目終了

 

 
  ワインの記録をつけ始めて2年が経過した。面白い遊びだ!呑むペースを少し下げないとまずいのに、なかなかペースが下げられない。2年前と比べれば飛躍的にワインの経験が増えたけれども、いまだ全く未踏の場所が多すぎる。カリフォルニア、ローヌ、ボルドー、スペイン…このあたりは殆ど時間も予算も回していない。贔屓のイタリアにしても終わりが見える気配が無い。全部手を出したら身体も予算も駄目になってしまいそうだ。
 
 
 最近、ロールシャッハテストに似ているなぁとよく思う。ロールシャッハテストは、インクのしみから連想されるものは人それぞれで、反応にはバラツキがあるし、そのバラツキ具合からその人の特徴が見えてくる。その一方で、提示されるインクのしみのなかには、だいたいの人が似たような連想をするカードもある。たとえば「蝶」「蛾」「飛行機」が連想されやすいインクのしみもあれば、「小熊」「太った男の人」「ガチャピン」が連想されやすいインクのしみもあるように。
 
 ワインも、これに似ている。多くの人が「ライチ」「パイナップル」を連想しやすい匂いがあったり、「ニス」「セメダイン」を連想しやすい匂いがあったり。言葉は多少違っても、似たような表現になるような匂いや風味を持ったワインがあるのだろう。そしてボトルが同じでも、飲む人が違ったり、タイミングや体調が違えば反応も微妙に変わる。
 
 いわゆる単純なワインというのは、各人に想起される感覚がだいたい一定で、呑み進めていってもあまり変化が起こらないワインのことなんだろう。平日の夜には、そういうシンプルで美味いやつがいいと思う。反対に、複雑なワインは連想される感覚のバリエーションが豊かで、経時的な変化にも富んでいるのだろう、と思う。さらに、味や匂いの良し悪しや総体としてのバランスなどが加わって、「シンプルでおいしい/おいしくないワイン」「複雑でおいしいワイン/ぼやけたよくわかんないワイン」等等と人は体感するのかもしれない。
 
 ワインの場合、さらにヴィンテージの違いや作り手の違いによって、同じ品種でも微妙な違いがある。ロールシャッハテストは全国一律のインクのしみだけど、ワインの場合、少なくとも理屈としてはひとつとして同じ“インクのしみ”が存在しない。同じメーカーの同じ畑の同じ品種でさえ、ヴィンテージや保存状況などによって変化が起こる。そしてワインは呑めばなくなってしまう(あるいは開栓した段階から劣化しはじめる)ので、“インクのしみ”と対峙できるのは一回きりで、しかも制限時間があるときている…。
 
 これらを念頭に置きながら、自分の五感をフル活用して、自分がワインから連想し体験したものを比較検討していき、A社のB畑のワインは土っぽい匂いが気持ちいいだの、C社のD畑のワインはバランスがいいだの、自分なりに経験を蓄積していくのがなんとも言えない楽しみだ。なにか、自分自身の感覚を訓練しているような趣がある。ワインの上手な人達は、“インクのしみ”を鋭く(正確に、とはちょっと違うような気がする)想起し、そのバランスや複雑さを吟味するのに慣れているのかもしれず、感覚の上限には果てが無さそうだ。いくら訓練しても天井知らずということは、生涯この訓練を続けてもたぶん飽きないということでもある。身体に気をつけながら、しっかり頑張っていこう。