ペガソ・ゼータ [2019] テルモ・ロドリゲス
このワインは、テルモ・ロドリゲスが作っているおいしかった赤ワイン「ゼータ」。前回、7月に飲んだ時はバランスの良さからびっくりさせられた。今回はどうだろう?
まず見た目。ガルナッチャ(グルナッシュ)でできているというけど、最近のピノ・ノワールよりも薄い色じゃないかと。ややオレンジ色がかった、透明感のあるカラーだ。香りには、おしることアセロラ、それと土っぽさがある。高いブルゴーニュグラスを使っていないからかもだけど、今回は揮発臭、照り照りとしたにおいが強い。それと青竹みたいなにおいも?
口に運んでみると、あまいおしるこから入って、苦みがたっぷり。あっこれはアルカリ土類金属的、前回と同じくクリュ・ボジョレーのモルゴンみたいなやつだ。苦み、亜鉛、そういう言葉を連想させる風味が口のなかでくるくる。一杯目から面白く、飲み心地も良い。今回はあまりキノコはイメージしなかったけれども、後半、ブランデーよりも葡萄っぽい、なんだか葡萄精気パワーがこみ上げてきて圧倒される。ワーオ素晴らしい体験。高級ブルゴーニュや超熟成ボルドーには及ばないにせよ、多彩さと強いインパクトを伴った優れたワインだった。これは、価格帯から連想される味ではない。
【2515】Luciano Sandrone Dolcetto d'Alba 2021
ルチアーノ・サンドローネ ドルチェット・ダルバ
※リンク先はヴィンテージが現行です。
このワインは、ピエモンテで名が売れているルチアーノ・サンドローネが作っているドルチェット、その新しいヴィンテージの品。ドルチェットはすごいぶどう品種ではないけど、心休まる癒しの赤ワインであることが多い。そしてこの作り手ほどになるとそれが極まっていてとても良い。
まず見た目。不透明感の高い、それでいてどこか蛍光ピンク、いや蛍光紫といった趣のある色合い。香りは、よもぎ、しそ、梅をミックスしたようなちょっと和風なやつが漂ってくる。
口に運ぶと、なんとも柔らかい飲み口だ。しそっぽさを伴った豊かな果実味の質感がいい。こういうの、テクスチャーが良いっていうんだよな、うん、このワインはテクスチャーがとてもいい。タンニンはやわらかく、口のなかが常に赤ぶどう果実でいっぱいになるかのようだ。しそやヨモギの香りが、マスカットのような風味に変わっていくのもまた好ましい。このあたり、以前に2017を飲んだ時と共通点がしっかりあって、なるほどそういうワインなんだなと思わせる。
バローロやバルバレスコやブルゴーニュワインのようなトーンの高い揮発臭、繊細なあやは欠いているけれども、ドルチェットはそういう品種じゃないんだよと割り切ったつくり。でも、今日はそういうつくりのワインが飲みたかったからこれでいいのだ。畏まった舞台、カッコつけなきゃいけない食卓にはドルチェットは持ち込まないか、前座として出したほうがいいかも。でも普通の食卓に沿えるならドルチェットで不満のあろうはずもなく。うまいうまいと飲んでいるうちにどんどんなくなってしまう。
※二日目。変わらずゆったりとしたワインだ。気兼ねしなくて良く、それでいて品質は確かなこういうワインは貴重。鼻高々なワインばかりがワインではなく。
【2514】Domaine Machard de Gramont Savigny-les-Beaune 1er Cru Aux Guettes 2019
【マシャール・ド・グラモン】サヴィニ・レ・ボーヌ・1er・オー・ゲット[2020]
※リンク先はヴィンテージが異なります
このワインは、名前ぐらいは聴いたことがあるけど買ったことのない作り手の、サヴィニ・レ・ボーヌ一級。で、このワインは「ブルゴーニュ赤が床下の準ー保存環境下でひと夏を過ごした時にどうなるのか」を確認するために埋められた人柱だったりする。2019は暑めのヴィンテージだったと思うので、少しぐらい痛んでもまあ飲めるんじゃないか。さてどうでしょうか。
色合いは、いまどきのブルゴーニュ赤らしい、まあまあ暗い、そして赤茶色っぽい色調。グラスのへりまで色が明瞭なので、くたくたになっているわけではなさそう。香りは、イチゴとチョコレートの間に揮発臭がビブラートっぽく混じっている感じで香りだけで楽しくてしようがない。あんこみたいな風味、化粧品、石と土の間みたいな香りまでするから上等だ。
口に運んでみると、なだらかー、なで肩なワイン。イチゴの甘酸っぱさがいっぱいに炸裂してフレッシュさがある。後味はあっさりしていて酸もやわらかく、あんこ、石と土の間みたいな風味が味覚のほうにもせり出している感じだ。タンニンがばさばさしているのか、このワインが粉っぽいのか、ブルゴーニュ赤にしてはざらざらとした印象を受ける。香り吟醸なのは間違いないけど、味はちょっと平凡で、飴細工みたいな香りを伴うとはいえ、アセロラ風味。平凡ったって一般的に考えるなら十分美味い水準だけど、香りのポリフォニー的豊かさに比べればおとなしい飲み心地だ。
※翌日になると、石と土みたいな風味はあったものの、フレッシュさが後退し、なにより香りのポリフォニー性が大幅に減退してしまった。初日のうちにたっぷり飲んでおくべきワインだった。こういう点では、やっぱり安かろう悪かろう……とは言わないまでも、一流ドメーヌには及ばない感じはある。
【2513】Louis Eschenauer Cabernet Sauvignon 2019
ルイ エシェノエール カベルネ ソーヴィニヨン IGP ペイ ドック 2019
この品はフェリシティーさんで売られていたフランス南西部産のカベルネソーヴィニヨン。クラスはAOCでなくpay d'oc、気軽に飲んでくださいなワインであるのは明らか。ハンバーグを焼く際の料理用として引っ張り出されたけれども、旨ければ当然飲んじゃいましょう。
まず色。まったく不透明なノワール&ルージュで底がみえない。グラスのへりはやや赤茶色、レンガっぽい色合いをしている。香りはプラム系の酸っぱそうなやつとバニラ系の甘ったるい香りが混じっている。プラムというより梅ジャムといったほうがイメージ近いかもしれない。
口をつけると、これがやっぱり梅ジャム的だ。酸っぱいんだけどあまーい感じを伴っていて、親しみやすいのかそうでないのか難しいところ。んー、そのー、アンバランスかな。飲み始めだからかもしれないけど、味も香りも、えらく気安いところときついところが同居していて両者があんまり取り持たれていない感じだ。タンニンは同品種としては平均的で値段相応のタンニン、その奥から墨汁っぽいニュアンスも顔をのぞかせる。ボルドーのカベルネソーヴィニヨン系に比べて果実味に握りこぶしが強く、落ち着いた飲み心地とは言えない。が、産地が違う以上、違った飲み心地であることを悪く言うのも何か違う気がする。この価格帯でフルーツ爆弾みたいなワインが欲しければ候補のひとつかもだけど、そういうワインは新世界にもあるので、もし買うとしたら、どうこいつを位置付けるべきか。ちなみにハンバーグはとてもよくできて、そのハンバーグとの相性も良好でした。
【2512】Domaine Michel Gaunoix Pommard Grands Epenots 2017
ドメーヌ・ミシェル・ゴヌー ポマール 1er グラン・ゼプノ [1997]
※リンク先はヴィンテージが異なります
このワインは、セラー被災によって叩き出されたミシェル・ゴヌーのポマール一級、グラン・ゼプノ。メーカーといいポマールという土地柄といい、寝かせて飲むのが良さそうなボトルなのに、被災に際して最も激しく吹きこぼれたのはこのボトルだった。そのため液面が通常より下がってみえている。なので、泣く泣く抜栓と相成りました。
まず見た目。これぞクラシックスタイルのブルゴーニュのピノ・ノワールといわんばかりの、すこし淡くてあずき色の、あまり濃くない赤ワイン。薄いつくりのヴォルネなどに比べれば濃いかもだけど、今日のブルゴーニュ赤のなかではかなりの薄さ。香りは、アセロラとチョコの香りなんだけど、いつものチョコに比べると随分と濃い。古タイヤみたいな香りがして、つまりこのチョコ、トリュフ入りチョコに例えたくなるようなごついにおいを伴っている。
口に運んでみると、うわっ酸味がえらい立っているぞ! 最初に来たのは酸。それこそアセロラドリンクの酸っぱさをもっと酸っぱくしたようなやつだ。そこから濃いエキス成分というか、トリュフ入りチョコみたいなコク成分ががつんとこみあげてくる。同じメーカーのリュジアン・バ(2012)と比較して、こちらのほうがタンニンは軽く、鉄砲漬けみたいな強烈な発酵風味は伴っていない。そのかわりこいつは古タイヤや、ちょっとオリエンタルな香料っぽさ、それと肉料理っぽさがある。かと思えば、異様にミルキーでキャンディーな展開やおてんば果実たっぷりモードもよぎったりする。後半になると、リュジアンと共通する、鉄砲漬けや味噌田楽のような風味が伴うようになり、さらに薔薇香水の風味まで展開した。これは……ちょっと並みのワインではないぞ!
痛んでいるいないの当否でいったら、間違いなくダメージ経験のあるボトルだろうけど、それでも非常に美味く、面白い。リュジアン・バとの比較でいえば、好みは間違いなくこちらで、価格もこちらのほうがまだマシなので、機会があったら買い求めたいのはこちら。近いエリアのワインでは、やや方向性は異なるもののコント・ラフォンのモンテリ一級デュレスが近いかもしれないが、こちらのほうがヤンチャで顔貌の変化が大きい。方向性が一層異なるのを前提に言えば、比較させるべきは同じコント・ラフォンでもヴォルネ一級サントノあたりじゃないかとか。堪能しました。
※翌日は鉄砲漬けのような風味や薔薇香水が引っ込んで、ちょっと弱くなった。抜栓したら初日に少し欲張って飲んだほうが吉かもしれない。とはいえ二日目も飲みごたえはあって、それでいて付き合いやすさはリュジアン・バより上。
【2511】E.Guigal Cotes du Rhone Rouge 2018
コート デュ ローヌ ルージュ[2018]ギガル
このワインは、しばしばお世話になっているローヌ大手・ギガルのベーシックな赤ワイン。安いんだけど手堅くおいしい良いワインだ。2018というヴィンテージは今回が初対面。
まずグラスに注ぐと赤黒く実に濃い。光にかざしてもほとんど不透明な濃さだ。甘い香りと酸味を予感させる香り、それからあんこみたいなのがにおいの第一印象。
口に運んでみると、苦みがぐわーんと口に広がり、そのうえでミルキーで甘い味がくっきりと。前回2016ヴィンテージと比較すると、果実味より苦みが前に出た、ちょっと違ったつくりになっている。苦みは鉛筆みたいだ。これはヴィンテージの性質によるものだろうか? 後味からじわじわと酸味が来て、このワインが濃いだけでなく酸味のしっかりした赤ワインであることを思い起こさせる。決してまずくないけど、いつもと路線が違う感じで少し戸惑う。もっとバランスファイターだった気がしたのだけど?