ジョルジュ・リニエクロ・サン・ドニ [2016]
※リンク先はヴィンテージが異なります
このワインは、ブルゴーニュ中核エリア、なかでも高価なワインで知られる北部(コート・ド・ニュイ)でつくられるグランクリュのなかではマイナーな部類の、クロ・サン・ドニで産する品。作り手はジョルジュ・リニエというあまり高くないところで2013年のヴィンテージなので、そろそろ飲めるかなと思って着手してみた。
まず抜栓。クロ・サン・ドニと書かれたコルクを抜いて裏側チェック。カシス色のいい色をしていて、香りも抜群だ。グラスに注ぐと、前日に明けたフェヴレのメルキュレよりも薄い色をしていて、ややオレンジ色がかっている。香りは……なんだこれは、柿か? 冷えているせいか、閉じているせいか、柿みたいな香りがほんのりと漂うぐらいでよくわからない。とりあえず、グラスに注いでしばらく待機してみるとカシスみたいな果実系の香りも結構香ってくる。
口をつけてみると、香料大炸裂! 最近飲んだワインでは、ルネ・ルクレールのジュヴレ・シャンベルタン一級に似ているけれども、こちらのほうがよりオリエンタルな香りを含んでいる。前日から引き続きいてフェヴレのメルキュレと比較すると、こちらのほうが黒系果実然としていて、あちらの青々しさとは様子が違う。でもって、香料っぽさの強いワインだからかこれまたローヌの高い赤ワインに風味が似ているなと感じる。見た目はかなり薄いのに、香りと風味は濃厚でローヌの高級ワインと渡り合っている。ピノ・ノワールってやっぱり面白い品種だ、腐っても特級畑でつくるとこうなっちゃうのか。
昨日のメルキュレと比較すると、あちらのほうが色が濃く、野趣があるというか、枝なのか森の下草なのかわからない風味が強い。で、こちらのほうが果実味があり集中力が高いと感じる。あちらは確かに旨いのだけど、集中力と華やかさにおいて、大きな差をつけられていると感じる。や、メルキュレと北部の特級じゃ当然の違いなのだけど。とはいえ、あちらのメルキュレもよくやっているしブルゴーニュの畑ごとの担当領域の違いみたいなものも感じられ、趣深い。特級と格下の比較のたび、格下ならではの持ち味みたいなものが暴露されるのは趣味的に素晴らしい楽しみだ。好みだけで言えばメルキュレを選ぶ人がいてもまったく不思議じゃないと思う。
とはいえメルキュレから戻ってくると、香料に白コショウのような雰囲気も混じって、いやいや、やっぱり特級は凄いと感心しきり。香りと味のバリエーション、集中力、心地よさ、そういった点ではメルキュレを圧倒している。同じメーカーの一級と比較すると、こちらのほうがローヌ的というか、パワーがある。ワインはこれがあるからなー……たとえばこのワインの後に最上級の特級を連れてくると、同じように圧倒しちゃうのだろう。とはいえ今夜はこのワインが真打。たいしたものだった。
※ところが二日目、失速している! 香りと風味が軽くなってしまった。ヴィンテージの問題か作り手の問題か。いずれにせよ残念だ。