北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2116】Argiolas "Serra Lori" Isola dei Nuraghi 2019

 
セッラ ローリ 2019 アルジオラス
 
 今日の夕食は鮭を使ったチーズ焼きを中心としたもの。これに合わせるべく、ロゼワインを用意した。ものは、サルディニアで良いワインをつくっているアルジオラスの品。
 
 まず見た目。とても薄い朱色をしていて、赤銅色っぽさがある。チェラスオーロのような、おなじイタリアのロゼでも少し色の濃いものに比べるとはっきりと淡い。香りは、ロゼ特有というより、甘くお砂糖でコーティングした金柑を思わせるような芳香が鼻につーんと入ってきて気持ち良い。上等な香りだぞ。
 
 口に運ぶと、例の金柑っぽいフレーバーに加え、意外にも、非常にコクのある飲み心地。全くしゃばしゃばしていなくて、見た目とは裏腹に低重心。バターや木の実とはまた違った、とても厚みのある飲み心地だ。僅かに微炭酸めいた感触があるのが、欠点といえば欠点かもしれない。この厚みのある飲み心地をじっくり味わうにあたって、ちりちりして集中力を削いでいる感じがある。でも、この微炭酸がいいという人もいるかもしれない。でも、このコクの豊かさと低重心は、みようによってはジュヴレ・シャンベルタンのようですらある。
 
※二日目は、初日に比べてふつーのロゼに近くなった。けっして悪くないけど、初日の迫力のある姿のほうが好ましかった。なんにせよ、これはちょっとしたロゼだと思う。
 

【2115】Domaine des Accoles "Chapelle" 2012

 
ドメーヌ・デ・ザコル シャペル [2012]750ml
 
このワインはテーブルワイン規格のローヌ産赤ワイン。テーブルワインというには値段はちょっと上で、なんとなくいい雰囲気のボトル、しかも8年も前のヴィンテージだ。なにやら良いところがあるのだろうか。
 
まず見た目。ボトルからグラスに注ぐ時の色合いは、かなり赤茶けている。もともとに加えて、少し熟成したのかな。香りは、切りたての木材みたいに、木材系のかおりに加えてねばっとした少し甘い、樹液チックな香りがよぎる。ローヌにありがちなジャムよりも、木材&樹液のほうが強いぐらいだ!
 
口に運ぶと、今度は木材よりも鮮烈な果実味のほうが印象的。ローヌの赤ワインのなかでも、こいつは果実味が鮮やかというか、ジャミーであると同時にさっぱりきっぱりとしたところがある。酸味が強くてキュッとしていて気持ち良いとも言えるかもしれない。後味に残る酸味がとにかく気持ちよくて、みようによってはキュートですらある。ひとくち飲みほした後の余韻もいい。飲み口はローヌ産のテーブルワインだけど、後味がとても上品で格上のワインのようだ。やるじゃないか、この作り手さん! 飲み進めてもだれる気配なし。凄まじいクオリティではないとしても、手堅く丁寧につくられているという印象を受けた。たぶん現代風。
 
※翌日は、少し酸が強まって上品さが減ってしまった。が、一般的に考えるとこれぐらいでも十分なぐらい。概して気持ちよく飲めるワインだった。

【2114】Charles Drapier Beaujolais-Villages Nouveau 2020

 
www.vivino.com
 
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
最初のワインは、2020年のボジョレーヌーボー(ヴィラージュ)。最近、ボジョレーヌーボーのヴィラージュは結構いけると思っていて、これもいけるかもしれない。まあ騙されたと思ってやってみましょう。
 
まずグラスに注ぐと、ワインにピンク色の色合いが混じっているというか、蛍光ピンクっぽさが漂っている。なにこれ。香りは、びっくりするほどサクランボ。ちょっとお砂糖コートされたお菓子のサクランボみたいな、キュートな香りが充満するけどどこか爽やかさがある。およそワインっぽくはないけど、ワインが得意じゃない人にはうけがいいかも。悪くない。
 
口に運ぶと、サクランボにアセロラジュースをまぜたような酸っぱみのしっかりした甘酸っぱさが口のなかに炸裂する。普通のボジョレーに比べると甘酸っぱさと新鮮さのウエイトがずっと大きく、コクのあるガメイらしさは目立たない(が、ないわけでもない)。ボジョレーヌーボーにはバナナのようなへんな風味が伴うことがあったけれど、このワインの場合、後味に少し感じるぐらいで、酸味と果実味ががんばってくれている。けっこういいワインだと思う。

【2113】Cono Sur Reserva Especial Syrah 2018

 
コノスル エスペシアル シラー 現行VT
 
最近、ロワールの赤ワインとか、ローヌの知らないメーカーのワインとかを試す機会が続いたので、ここらで標準的なワインに立ち戻ってみたいと思い、指標のひとつであるコノ・スルのリゼルヴァクラス(現・エスペシアル リゼルヴァ、要は1100円ぐらいのクラス)を試してみることにした。シラーは、このクラスのコノスルの鉄板ワインだったはず。ふつーの焼肉料理と一緒にいただくことに。
 
まず色チェック。うわあ、ものすごく濃くて不透明、少し青紫に寄ったカラースペクトルで、ごっつい色合いだ。巨峰みたいなぶどうの皮をそのままワインに入れたらこんな色になるんじゃないか、というような。香りは、色にふさわしいカシスっぽい香りに加えて、マジックインキのような油性系の香り、それとスモモをかじった時に感じるタイプの植物系のにおいというか、オーガニック系の香りというかが混入している。それともルバーブ? 生臭い、とみることもできるけれども農作物っぽい、とみることもできる。でもって、香りがとても強い。豊かだ。
 
口に運ぶと、前述の香りを反映したエキスがどどどっと入ってくる。タンニンが結構あって赤ワインが苦手な人にはきつく感じられるかも。マジックインキと巨峰の皮とカシスが鼻腔をつきぬけていって、口のなかにはたっぷりの果実味と苦みとタンニン。この価格帯のチリワインは、良くも悪くも大柄で、香りや味、タンニンなどのスカラー量が大きいと感じるけれども、このワインも御多分に漏れずそういう感じ。
 
これはこれで旨い。旨いし、「本格的」だし、よくできていると思うのだけど、今の自分がこの価格帯の赤ワインに期待しているのは、こういうパワフルな風味ではなく、もう少しソフトな路線なのだろう、とは思った。
 

【2112】Krug Grande Cuvee (N.V.)

 
クリュグ 並行輸入品
  
今日は、拙著『健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて』が「紀伊國屋じんぶん大賞2021」の4位に入ったお祝いもかねて、クリュグでお祝いすることにした。クリュグを自宅で飲むのは十数年ぶり(昔はもっと安かった……)。今となってはお祝いごとでもなければなかなか飲めない。
 
まず見た目。黄金色、というより少し山吹色~オレンジ色っぽさのある、なかなか濃い色合い。泡は控えめながら、とてもゆっくりとした速度で立ち上り、そこらのスパークリングワインやシャンパンの追随を許さない感じ。香りは、初手からメレンゲと漬物がぐっときて、立派なリンゴの香りが来る。表現だけでいえば、こういうシャンパンは「漬物系」とこのワインログで呼んでいるワインにいくらでもあるのだけど、こいつはそれらの香りの要素の統合の度合いが高い点、リンゴがしっかり香ってくるのにふくよかさを伴っている点で丁寧だ。思ったよりも、ヴーヴクリコのラ・グランダムの香りに近いとも感じた。
 
で、口に運ぶと果てしないリンゴ風味。リンゴ風味の射程がおそろしく長くて、口のなかに余韻がどこまでも残る。メレンゲのような甘いニュアンスと、漬物、特に奈良漬けのようなどっしりとした感覚がせりあがってくることもある。でもって素晴らしいのは、それらの調和がとれていること。味のスカラー量がいずれも高く、しかもどれもハイレベルでまろやかに口のなかで溶け合う。舌触りのなめらかさも長所だ、こういった諸点でラ・グランダムや(モエの)ドンペリニヨンのくたーっとした境地に近い。それらとの優劣をはっきりと言えないとしても、これは鑑賞するに値する、それでいてハイレベルな癒しのシャンパンでもある。
 
シャンパンの高級路線は買うだけ無駄、よそで飲めばいい」なんて思っていたけれど、これと対峙し、ちょっと考えさせられてしまった。これほどの快楽、これほどの調和を見せつけられる赤/白ワインが同価格帯でいったいどれぐらいあるだろうか。なまじっかなブルゴーニュの特級やへたなボルドーメドック格付けたちと比較した時、このクリュグを凌駕できるボトルはけっして多くないように思う。や、もちろん一本5万10万するボトルを十分熟成させた時のポテンシャルはまた別でしょうけど。実はあまり期待せず抜栓したので、あまりの出来の良さにすっかり驚いてしまいました。

※翌日に少し残して飲んでみた。泡は微発泡になっていて酸味が少し勝つようになったけど、ふっくら複雑な味は健在だった。
 

【2111】La Pousse d'Or Clos de la Roche 2010

 
プス・ドール クロ・ド・ラ・ロシュ 2012
 ※リンク先はヴィンテージが異なります
 
このワインは、ブルゴーニュの中核エリア、コート・ド・ニュイのモレ・サン・ドニエリアの特級。ほんらい長熟するワインといわれるクロ・ド・ラ・ロッシュなんだけど、格安で手に入れたものでしかも2本所持していたのでここらで一本飲んでみることにした。メーカーはプス・ドールなので、けっしてこのエリアの専門とはいえない。でもヴォルネで馴染んだメーカーではあるので、比較はしやすいと思う。まずは一献。
 
グラスに注ぐと、赤茶色の液体が出てきて、ちょっと淡いかなと思いきやグラスに置いたたたずまいは意外に濃い。でも色合いはレンガ色っぽくて見栄えはなかなかのもの。香りは……グラスに注ぐだんに夕張メロンがふわっと漂ったけれども、鼻を近づけてみると、調理済みのマッシュルームの気配が強烈に漂う。チョコレートやいちじくもあるんだけど、きのこや引きちぎった直後の生の枝など、生命力を感じさせる香りだ。非常に活きのいい、精気ばつぐんのワインとお見受けする。
 
口に運んでみると、はじめは水っぽいかなと思ったけれども、口のなかに拡がるスケール感はただものではない。コクがある、そりゃもちろんあるのだけど、それより口のなかで圧倒するような広々感が抜群だ、タンニンのおかげだけでは、こうも雄大なワインができるとは思えない。今までに飲んだジュヴレ・シャンベルタンたちを思い出しても、ここまで雄大なワインではなかったと思う。ときに、塩分というかミネラリーな感じが爆発することもある。水っぽい感じ(そして余韻の弱さ)は、なんとなくこのメーカーのヴォルネ一級と共通点があるけれど、この雄大さはまったくヴォルネっぽくなくて、ああ、特級という実感がある。プス・ドールは後味がいまいちで、ここがワインの完成度をかなり削っていると感じる。とはいえ価格の安さ(と自分の場合はヴォルネとの比較がしやすい点)はアドバンテージで、このことを承知でいくつか特級を飲み比べてみようと思う。
 
なお、このワインのあてとしてうなぎの肝を炭火で焼いたものを用意したのだけど、期待通り、ミネラルな感じとこってりとしているところがよく合っていた。うなぎの肝と一緒にいただくと、特級のヴェールに隠れていた酸味と果実味がわかりやすくなる。おつまみと行ったり来たりしながら飲んだ。
 
※二日目、あまり期待せずに飲んでみたら、初日よりも甘味やまろやかさが目立つワインになっていた。初日のほうがやっぱり威勢は良かったように思う。初日に少し多めに飲んで二日目は少し少な目がいいかもしれない。