北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2249】Vigneti Zabu "il Passo" Nerello Mascalese 2019

 
ヴィニエティ・ザブ イル・パッソ ネレッロ・マスカレーゼ
 
このワインは、シチリアで最近目立つようになってきた、ザブが作っている赤ワイン。品種はネレッロ・マスカレーゼ、名前にはよく聞くけれども飲む機会はあまりない。
 
まず色は中庸、それなり濃いけれども光はわりと通している。香りは、はじめ梅系線香、同じシチリアが地元のネロダヴォラみたいな感じかなと思ったけれども、それにしては香りに瑞々しさが伴っているのと、だんだん揮発臭が強まって塗料やセメダインを連想させる点でだいぶ違っている。なんだこのワインは。
 
口に運んでみると、わっ!酸っぱい!めちゃ酸っぱいうえにせきこむような強烈な果実味が伴っている。アメリカンチェリーを特濃にしたらこうなるんじゃないかというような、野趣と濃厚さ。タンニンは穏やかで引っかかりどころがなく、そのことも果実爆弾っぷりを際立たせているように感じられる。葡萄酒にフルーティーさを期待する人には最適かもしれない。
 
※翌日も調子はほとんど変化なし。穏やかに飲める果実たっぷり系ワイン。こういう果実たっぷり系イタリアワインだと、より安いモンテプルチアーノ・ダブルッツォと、ピンからキリまであるドルチェットあたりが競争相手か。肉厚な果実たっぷり系がいいなら、この品がベストかも。
 

【2248】Thalvin & Alain Graillot Tandem Syrah du Maroc 2018

 

タンデム アラン・グライヨ 2018年 モロッコ
 
続いて、モロッコ産の赤ワインを。こいつはローヌの作り手と組んでつくられたとされる、シラー100%のワイン。これまた濃そうな雰囲気だ、いったいどんな感じだろうか。
 
見た目は、さっきのチュニジア産とあまり変わらない。で、こいつは香りがよくわからない。もちろんコップに入って出てきているので、立派なグラスだとまた違うのかもだけど。それと自分が酔っぱらっている影響もあるか。もういいや、飲んでみよう。
 
口に運ぶと、すんごいパワーだ。さっきの品が果実爆弾だったのに対し、こっちはタンニン爆弾。すっごい渋い、ここまで渋いワインってちょっと無いんじゃないかっていうほど。果実味はあっても甘味は控えめでこってりとした口当たりはあるのだけど、なんだか硬派、超辛口って感じだ。単体では結構きついものがあるのだけど、ケイジャンチキンだのクスクスだのと一緒にやるぶんには結構飲めたりする。鼻息の荒い、大柄なワインなのは間違いないのだけど、これはちょっと大きすぎて手に余るかも。それともこのタンニンも熟成させたほうがいいのか?
 
※後になって考えてみると、はじめのチュニジア産は甘味が強かったので、このワインの印象が修飾されていた可能性もあったかもしれない。
 

【2247】Domaine Shadrapa Coteaux de la Medjerda Rouge 2013

ドメーヌシャルトパ ルージュ
 
このワインは、中近東の料理を扱っているお店でリストに入っていた、チュニジア産の赤ワイン。フランクなお店なので、コップと一緒に出てきた。でもそれできっと事足りるのでしょう。
 
見た目は、黒々と濃そうな紫色。香りは、コップに入っていても香ってくるしっかりとした果実系の香り。メルローカベルネソーヴィニヨンでつくられているというけど、両品種の特徴ってのはあんまり感じられない。かわりに、なんか杉とかヒノキではない、別系統の入浴剤みたいな香りが……あっ!これはラベンダーだ。なんと、このワインからはラベンダーっぽい香りが来る。
 
口に含むと、もうびっくりするほどの果実爆弾。はちきれるほどの葡萄感があり、こんなにぱちぱちのワインが2013年産とはびっくりだ。でもって、ラベンダーっぽさはここでも健在で、一種独特の雰囲気を与えている。典型的ワインからはかなりずれているけれども、面白い。でもって羊のレアステーキやらチュニジアぎょうざやらアラビア風シシカバブやらとは良い相性をみせる。これ、ボルドーグラスとかで飲んだらどうなるんだろう? これは、自分のところで買って飲んでみたいワイン。地中海沿岸の羊料理とうまく釣り合っている感じだ。
 

【2246】Allegrini Palazzo della Torre Veronese 2018

 
パラッツォ デッラ トッレ 2018 アレグリーニ
 
このワインは、安定したアマローネを作っているアッレグリーニの、それより下の格のワイン。ワインには「ヴェロネーゼ」とだけ書かれていて、エチケットにイタリア語でロミオとジュリエットの里などと書いてあるので、伝統的な製法のワインではないのだろう。
 
グラスに注ぐと、もうその段階からジャム系のかぐわしい香りが伝わってくる。ワインは黒具としていて不透明、香りをよく確認すると、アマローネ系にしては梅っぽいツーンとした香りが優勢と感じられる。それと少し土臭さがある。
 
口に運んでみると、ハムのような肉系のかおりが口のなかにふんわりと膨らむ。そのせいか、このワインは肉厚と感じられ、まるで食べ物のようだ。アマローネに比べると苦みと甘味は弱めで、タンニンもするっとしている。酸味はまずまず、フランス系のワインでいえば肥えたグルナッシュに近い。
 
で、販売元のトスカニーのサイトに行ってみると、このワインはアマローネと同じ製法のワインを30%含んだリパッソ(注:リパッソそのものはアマローネの出涸らしを二次発酵させた、そういうワイン)なのだそうで、70%リパッソ30%アマローネとでもいうべきものだとか。やー、それにしてはドライなワインですねー。これはこれで悪いワインではないのだけど、アマローネのイメージからは遠く、近い価格の安アマローネ(ルイジ・リゲッティとか)には太刀打ちできていないよう感じられる。
 
※二日目。なんと、甘さや苦さが伴ってきて急にアマローネっぽい雰囲気にたどり着いた!持前の肉厚さに甘味と苦みが伴うと、こんなにアマローネっぽくなるものなのか。で、下品ではない。これは完全に二日目のほうが能書きに近い性能。この品は飲むタイミング(たぶん熟成の期間)をよく考えて楽しんだほうが良さそう。
 

【2245】Charles Drapier Beaujolais-Villages Nouveau 2021

 
vinica.me


このワインは、シャルル・ドラピエというメーカーが作っているボジョレーヴィラージュのヌーボー品。ドラピエっていったらシャンパンのメーカーだったと記憶しているけれど、そこがヌーボーを手掛けているらしい。果たしてどんなものなのか(なお、なんちゃらすぺしゃるきゅべーみたいな文句もあったけれども省略した)。
 
まず見た目。ショッキングピンク~パープルがかった、蛍光色がかった色をしている。ボジョレーヌーボーらしい色かもしれない。香りは飴でコーティングされた昔のサクランボ菓子のような香りで、これもガメイとしては典型的だ。いいんじゃないだろうか。
 
口をつけると、ぱっと華やかなあまーい風味が口のなかに広がる。穏やかな酸味とするりとした飲み心地。ちょっと水っぽいかもしれないけれども、新鮮さにかけてはさすがヌーボー、目の覚めるような爽やかさがある。えぐみや変なにおいもなく、すいすいっと口のなかに入ってくる感じだ。飲み進めても、だいたいそんな感じ。ワインとしては少し物足りない感じがあるけれども、ヌーボーという飲み物とみればスイスイと飲めてマイナスポイントもみられず、心地よい飲み物だった。
 

【2244】Fantini Montepulciano d'Abruzzo 2018

 
【ファンティーニ】モンテプルチアーノ・ダブルッツォ[2019]
 
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
このワインは、イタリア大手ファルネーゼが手掛けている(ファンティーニという名称がついている)、モンテプルチアーノ・ダブルッツォ。このメーカー、この品種でハズレを引くなんてことは考えられないわけで、鉄板のセレクト。絶対においしいでしょう。
 
まず、色。黒々として予想以上に不透明、こんなに色素の強いワインだったっけ。色合いはやや青みがかっていて、若い印象を受ける。香りは、キアンティやサンジョベーゼ系の赤ワインに比べると澄んだ感じのするスミレ系、いや、これは素直にぶどう酒って感じか。さわやかな香りで、駄目なモンテプルチアーノ・ダブルッツォにたまにある変なくさみみたいなものは感じられない。
 
口をつけると、まさにその爽やかな香りを百倍ぐらい鮮烈にした、すっごく瑞々しい果実味がするするーっと入ってきた。タンニンはしつこくなく、後味がすんごくすがすがしい。鼻から頭に向かって気持ちの良い爽やかさが突き抜けていく。やー、うまいよこれ。難しいところがちっともなくて、リラックスして飲める感じで、すがすがしさがある。小難しい顔をしてブルゴーニュ赤やバローロバルバレスコ系のワインを飲んでいるのがバカバカしいと感じるほど、単純ながらに美味い。楽しく山分けしました。