北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【0057】Castello di Fonterutoli Siepi 1996

 
Castello di Fonteruttoli Siepi(リンク先は2003年のもの)
 
 食前酒に続いて、今日のメインに。どういうタイミングで呑むか迷っていた1996年の古酒。メルロー50%サンジョベーゼ50%という、なんとも今風トスカーナワイン。今年で13歳になるボトルのコンディションや、いかに。
 
 香りは…干し葡萄に似た匂いをメインにした、不可思議な匂いがいきなり飛び込んでくる。干し葡萄、漆喰、タール、チョコレート、セメダインを混ぜたような甘い匂いが、いつまでもいつまでも残る。しかも時間が経つごとに微妙に匂いの主役が変わっていく。干し葡萄優勢かと思ったら、セメダイン的揮発臭が優勢になり、思い出したようにバニラの芳香が漂ってくることもある。トカイワインに似た甘みを感じることもある。人を惑わすように、色んな匂いが次から次へと登場。
 
 味は…最初の遭遇時点では、酸味とタールを伴った、ゴッテリとした腐った葡萄(!?)を連想させる感触。その後は、渋みの割と少ない、非常に丸っこい酸味を主体とした、表現困難なややこしい味が持続する。唇に触れる時には酸味と干し葡萄のような甘みが感じられるのに、呑み込んでいくとこの限りではなく、バターっぽさというよりマーガリンっぽさに近い、ぶ厚い感覚がしっとりと残る。よくよく呑んでみればタンニンがちゃんと生き残っていて、これもアクセントに。
 
 二杯、三杯、と先に進んでも、香りのバリエーションと豊かさは全く失われず、熟成し尽くして枯れたワインとしての破綻をきわどく回避した、綱渡りのような美味しさが持続した。誰が嗅いでも葡萄酒、誰が呑んでも葡萄酒、の、境地が果てしなく広がる一本。普段呑んでいる若くて安い赤ワインとは美味しさの方向性が異なった、熟成しまくったワインだった。妖艶!