このワインは、よく通っているワイン屋さんで「シャブリの特級を飲むだけの甲斐性が無い」って話をしたら勧められたシャブリの特級。「2013年モノで、信じにくいかもしれませんが、今が飲み頃です」とお勧めされ、半信半疑で買ってみたもの。
まず、色。シャルドネとしては標準的で、さりとて平格ブルゴーニュ白ほどは薄くない黄色っぽい色。普通だと思う。
香りを確かめると、蜂蜜の匂い、というよりソーテルヌに近い、熟れた南国の果物のようなニュアンスが漂っている。シャルドネなのに、本当にソーテルヌのような香りがする!あるいは、枇杷の匂い。ソーヴィニオン・ブランにもどこか似ている。たまげた!
口に入れてみると、レモネードのようなソフトタッチ酸味で、アタックは柔らか。ところが、そこから沸き立ってくるミネラルはどうだ!圧倒的なミネラルがこのワインの骨格の異様な太さを構成していて、これが、ソフトタッチな酸味を押しのけて骨っぽいミネラルをゴロリと形作っている。香りはソーテルヌに似ているところがあるのに、甘さ控えめにしてミネラル超絶骨太、そして、海の塩で作った食塩のニュアンスすらある。味わいは、先日のルイ・ラトゥールのコルトンシャルルマーニュに似ているところもあるけれど、あちらよりも禁欲的、謹厳な感じがする。
ところが、抜栓から8時間後あたりから、急激に果実味が、それも、よくできた非-主流の柑橘類を噛みしめるような強烈な果実味(ただし、いつも飲んでいるシャルドネとはかけ離れた)を伴うようになってきた。すだちやユズと言いたくなるが、それにしては充実感があって、シュナン・ブランにも似た変な癖がある。で、鉱質風味は相変わらず。これは、へんてこなワインだ!へんてこだけど、シャブリとは元来のシャルドネの性質を持っている、という。だとしたらシャルドネって一体どういった可能性を秘めた品種なんだろう?ただ、このワインは余所の高級系シャルドネなんかに比べると、打ち解けず、偏屈で、変人的で、もしシャブリの上級バージョンがこういう性質だとしたら、高値がつかないのはしようがないと思った。
【1566】Naveran Brut Especial Blanc de Blancs CAVA (N.V.)
【1565】Ch.igai Takaha "Crossed Wing" Chardonnay 2013
シャトー・イガイタカハ・クロスド・ウイング・シャルドネ2013
近くのワイン屋さんで「ムルソーっぽいワインください、でも、オーボンクリマは無し」と言ったら、お勧めされたのがこちら。日本っぽいデザインのほどこされたカリフォルニアのシャルドネ。どんな感じでしょうか。
まず見た目。かなり黄色っぽくて、なるほどムルソーという感じがする。「山吹色の白ワイン」と言ったらこれでしょう。香りは、すごくクッキーっぽくて、少し湿った、憂いを帯びたような調子がある。その後ろから、台所洗剤系のさわやかなフレーバー、シャルドネ本来というか、シャブリに相通じるような清々しいグリーン系の香りが吹き込んでくる。おお、「オーボンクリマは無し」と言うニュアンスが店長に伝わっていたんだろうか。
口をつけてみると、まずリッチなバターとクッキーが来る。リッチだ!ところが、そこから爽やかな北方のシャルドネの風味がこみ上げてきて、リッチなバターとクッキーの風味を下支えしてくれる。いや、うまい、ついついグラスが進んでしまう。これは、なかなか良いですね。
※翌日は、もう少し「塩っぽい」「クラッカーのような」風味を伴ってスタート。色調も、少し濃くなった気がする。相変わらずビスケットっぽくもあり、ナッツでもあり、豊かな果実味と、それを下支えする爽やかな酸味のバランスも良い。二日目だからか、アンズのニュアンスすら漂っている。価格を考えると非常に善戦しているし、かなりムルソーっぽい。ありがたや、ありがたや。
【1564】Marcel Lapierre Morgon 2015
モルゴン ラピエール
※リンク先はヴィンテージが異なります
このワインは、より上級の品と一緒に手に入れた、モルゴンのワイン。なんと蝋で封印されている(ただし実際は合成樹脂っぽい)。2015をあけるのは早飲みもいいところだけど、二日目に期待で様子見のために開けてみることにした。
まず、グラスに注いでみると、グラスの辺縁がさすがに少し青みがかっている。黒々としているけれども透明感がちゃんとある色合い。香りは、初手ではローヌの赤ワインにありそうな、バイオレット~カシスのようなトーンの高い香りと、ボジョレー系にあって欲しいほっこりとしたチープな匂いが融合した匂いが香り立ってきて、ぎょっとした。それとアルカリ土類金属、マグネシウムとかそのあたりを連想させる、土っぽい香りがどんどこ来る。
口に入れてみると、意外なほどなで肩、甘くて柔らかくてミルキー、でもって、やはり、アルカリ土類金属。凄いミネラルが豊富で、金属っぽい、というより軽金属っぽい風味が口のなかに響く。ただし、これはカルシウムではなく、それ以外の何かを思わせる。乾いた色の土が思い起こされる。
でもって、噛みしめるほど果実味が湧き出てきて、土の風味と一体となって大変おいしい。このおいしさは、アルジオラスのモニカのおいしさに通じているし、こういうワインは元気が出る。早く飲んでもこれだけ美味いってことは、明日はどんな姿になっているのやら。すごく楽しみだ。
※一日挟んで3日目。口当たりが円やかになっている。そして、森の匂いと抹茶の匂いを合わせたような、得も言われぬ、ワインとしては上等の部類に入りそうな香りがこみあげるようになってきた。蜜~ポートワインを連想させる、甘い雰囲気も伴っている。古タイヤの気配すら!
これらは、まったく想像もしていなかった。口当たりが円やかなのに、アルカリ土類金属系の鉱質風味はいまだ健在。考えさせられるボジョレーだ、これは「考えさせられるワイン」ですよ!
【1563】Mont Plaisir Viognier 2015
今日の夕食はカツオのたたきを中心としたさっぱりとしたもの。それでワインを連れたいと思って選んだのは、ヴァン・ド・ベイ規格の、いかにも安そうなフランス産のヴィオニエ。スクリューキャップのボトルに入っている。
まず、色。かなり黄色い。ヴィオニエって黄色いワインだったっけか? 香りは、蜜系の甘いやつと、スイカズラやスズランあたりを連想させる香りがぷーんと漂ってきてうまそう。ヴィオニエらしい。
口に入れると、スカッとした酸味で少し石灰系のミネラルがあるように感じられる。ヴィオニエらしいボディの豊満なワインで、そのせいで、酸味があるとはいえ、ワインの真ん中に空洞があるような感覚は否めない。けれども、こいつは石灰風味のおかげで善戦している。ワインを一定以上冷やせば、さほど気になるほどではなく、蜜とふくらみとすがすがしい香りを堪能できる。
※二日目も、安ヴィオニエにありがちな空洞感にあまり悩まされることなく、さわやかに、それでいて風味たっぷりの良いテーブルワインでした。
【1562】Paul Beaudet Saint-Amour 2015
ポール・ボーデ サン タムール
このワインは、クリュ・ボジョレーのひとつサンタムールのもの。このサンタムールのワインはほとんど飲んだことがない。ヴィンテージが若いので、抜栓してしばらく放置してから飲み始めた。
まず、見た目。かなり不透明で、濃い色彩。あまり青色っぽいカラースペクトルは感じられない。グラスの表面がぴちぴちと空気に呼吸していて、とても元気そうにみえる。
香りは、初手からわけのわからない香りがする。ボジョレーっぽいチープな甘い香りは控え目で、梅系線香にパラフィンを大量にぶっこんで、玉葱エキスとジビエエキスを足したような、相当な香りがこみあげてくる。このワインはヴィンテージが若い。若いうちからこうなのは、一体どういうことだろう?
口に含んでみると、柔らかな口当たりで、香りに比べてマイルドで、ボジョレー・ガメイ系の風味のソフトタッチで飲み心地の良いところがしっかり来る。かと言ってペラペラには程遠く、飲むたびに手ごたえがある。軽いワインなんだけど、充実感があり、そういう飲み心地を飾るかのように、線香系の風味やチープなチェリーお菓子っぽい甘みが伴っている。かといってべったりと甘いのでなく、どこか風味に抑制が利いていると感じる。やるじゃないか。
※二日目は、昨日の香りに比べてだいぶマイルドになった。人前でインパクトがあるのは初日。一人でじっくり飲むなら二日目。二日目になって、初日はちょっと派手過ぎたんじゃないかという気がした。ワイン会のような場所では、そういう派手なワインのほうが人目を惹きそうなので、ボジョレーでびっくりさせるには良いワインだったのかもしれない。