北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

ワインの記録が1600回を超えた

 

 
 今年は久しぶりにワインを飲むスピードが早いほうで、半年ちょっとで100回ぶん増えた。人と飲む機会が多いと記録が早く進む。一日でボトル一本空いてしまうことや、グラスワイン単位で飲むことが増えるからだ。
 
 それはさておき、愛好するブルゴーニュワインについて、今、思っていることをちょっとばかりメモしてみる。後世の私が、このメモをどう読むのか知らないけれど、現時点の感触として。
 
 
・このワインの記録で「香木のような」「桐箱のような」と比喩している風味が、良いブルゴーニュワインの基準として以前よりも意識するようになっている気がする。以前は、森の下草、オーガニックな匂い(ともすれば、草食動物の糞に喩えたくなるような)などを重視していたし、それも重要ではあるけれども、加えて、香木系の香りが欲しいと思うようになった。
 
・転じて、これまで重視していたプス・ドールのワインの可能性をちょっと疑うようになった。この疑念が適切なのかどうかは、プス・ドールのストックを空けきるであろう、ずっと未来にならなければわからないが。
 
・数年前まで、中堅どころのブルゴーニュワイン(少しマイナーなエリアorメーカーの一級畑)は数千円も出せばだいたい手に入ったが、今では数千円で買える品はごく限られている。まあ、もうついていけないし、ついていくべきでもないんだろう。たまに良い品は買うとしても、同価格帯のワインはイタリアやローヌにすっかり心変わりしてしまった。
 
ブルゴーニュワインにコスパを求める、という発想自体が駄目だとするなら、奇跡のために少しだけ買い求めて、普段呑みはブルゴーニュワインからできるだけ遠ざかるのが正解、ということになるんだろう。
 
・ということで、現時点で中堅ラインを買うなら
 
 1.カリフォルニアも含めた新世界のワイン(とりあえず値段とクオリティが比例している可能性が高い)
 
 2.イタリア(特にアマローネとソアーヴェクラシコ
 
 3.ローヌ(濃い口な点を除けばまだまだ穴場)
 
 4.クリュ・ボジョレー(親しみやすく、全般にハズレが少ないと思う。文句を言うとしたら、これがボジョレー-ガメイ系って点だけ)
 
 あたりが無難のように感じられる。1.以外は「有名な赤白ワイン品種の王道」とは言えないし、好みの分かれるところなのかもしれないけれども、とにかく、身の丈を超えない範囲でやっていきましょう、と思ったりしています。
 

【1600】Domaine La Pousse d'Or Chambolle-Musigny 1er Cru Les Feusselottes 2011

 
プス・ドール シャンボール・ミュジニー 1er フスロット 2011
 
 1600本目の記念に何か良いワインが欲しくて、ゴソゴソ探し回ったけれども、なんだかちょうど良いワインが見つからない。1000回とか1500回なら、誰がどう見ても立派なワインを連れてきて良い気がするけれども、100回増えただし……と思ったら、いわゆる早飲み系とおぼしきヴィンテージの、記憶にない一級畑のワインが見つかった。これに決定。
 
 まず見た目。明るいピノ・ノワールで、透明感もあり、少し朱色方面のカラースペクトルでまずまず輝きがある。香りを確かめると、チョコレートのような香りがストレートに鼻腔に飛び込んでくるけれども、こいつにはミネラリーな感覚が伴っている。カレラのミルズに少し似ている。同じヴィンテージ、同じメーカーの、このときのヴォルネ・(エン)カイユレと比較すると、はっきりと香りが強く、甘くて豊かで、ミネラリーなためか品が良いと感じる。
 
 口をつけると、やはり弱めのアタック。しかし、その数秒後にはちきれるようなストロベリー系の果実味がパーッと現れて、数秒後にまた消えていった。ストロベリーに、少しアセロラっぽさを足したような軽い甘味が長く続くようになる。ここでも、ほんのりとミネラリーな雰囲気がついて回って、一定の雰囲気をつくりあげている。
 
 飲み進めると、ローソクのような匂い、いや、蜜蝋か?……それと香木、香木っぽさが加わってきた!飲み心地がミルキーになってきて、とても親しみやすい。煮込んだ小豆のような雰囲気もある。ブルゴーニュ中枢部北部(コート・ド・ニュイ)っていうより、よくできたヴォルネイじゃないかと思ってしまうけれども、世間的には逆でヴォルネがシャンボール・ミュジニーに近い、ってなるんだろうか。飲み始めの時期は、ヴォルネのよくできたワインに劣るとさえ感じたけれども、だんだん辻褄が合ってきて面白くなってきた。
 
 ※二日目になると、親しみやすさから始まったけれどもやがて失速、つまらなくなってしまった。ということは、このワインの潜在性は乏しかった、ということか。ここにきて、2011年の良クラスブルゴーニュの非力さを感じることが多いのは、やっぱり、このヴィンテージはバッドということなんだろうか。まだ自宅に残っていたような気がするので、赤については、処分してしまおう。

【1599】Willy Gisselbrecht Pinot Blanc Vin d'Alsace 2015

 
アルザス・ピノ・ブラン[2014]年・ドメーヌ・ヴィリー・ギッセルブレヒト元詰
 
 このワインは、アルザスワインのなかでもえらく安いメーカーの、ピノ・ブラン。ピノ・ブランって、どう楽しめば良いのか今一つわからない時期もあったけれども、「ソアーヴェクラシコか、イタリアの軽い白ワインのような感覚で」楽しみ、評価すれば良いと気づいてからは、お手軽品が欲しくなった。で、こいつは格安のうえ、ヴィンテージが若めなのでトライしてみることになった次第。
 
 グラスに注いでみると、ほんの少し赤みがかっているかもしれない(というより、緑系ではない)薄めの白ワイン色、いかにもピノ・ブラン。ほんの少し、気泡も混じっている。香りは、蜜系ではなく青々しい系、台所洗剤の香りのなかでも、ライムに近いような香りが強い。
 
 口に含むと、温度が足りないせいか、少し日本酒っぽさが感じられる。ゆるい。もっと冷やさなければいけなかったか。温度の問題か、抜栓直後の問題か、それともこのメーカーか輸入経路の良くないところか、飲み口には玉葱めいた、汗っぽさが当初感じられたけれども、やがて焼き葱のような風味に変わって、風味としては落ち着いた。シャルドネなどに比べると、口当たりは柔らかくてフワフワとした飲み心地で、水のように飲めてしまう。水のように飲んでも引っかからないのがピノ・ブランのいいところ(そしてソアーヴェクラシコも同様)だと思う。そこに焼き葱の風味が一枚噛んでいて、意外と面白い。単調だし、これがこの品種の王道とも思えないけれども、気楽でワンポイントのアクセントもあって良かった。
 
 ※二日目も意外と痩せず、焼き葱っぽさが健在。
 
 

【1598】Kumala Cabernet Sauvignon Shiraz 2015

 
クマラ カベルネ ソーヴィニヨン シラーズ 2015
  
 安ワインが手許になくて、けれども安ワインが欲しい。そんな日に、急きょ調達してきた南アフリカ産のワイン。この、とかげマークのメーカーは、お値段以上の良い安ワインを売っていたはず。今回はどうでしょう。
 
 まず見た目。意外と透明感があり、カベルネ・シラーズにしては黒っぽくない。いくらか青色がかっていて、グラスのへりが少し光っている印象すらある。香りは、あまり元気がない。果実味を予感させる匂いと、プラムや木工ボンドのような匂いはあるんだけど、あまり匂い立ってこないし、単調ではある。運んだ当日に抜栓したのがいけなかったか。
 
 口をつけると、甘味がかなり強くて、あたかもマジックを舌で舐めたような味が口のなかに広がった。雰囲気として「マッキーのような」やつがある。タンニンはそれなりだけど攻撃的というほどではなく、赤ワインとしては初心者にもわかりやすい構成。なんだけど、やはり「マッキーのような」、石油化学製品っぽい雰囲気を伴っていて、なんだか不思議ではある。個人的には嫌いじゃないけど、こういうのを嫌う人もいるような気がする。
 
 ※二日目は、昨日の不思議な雰囲気がなくなって、普通の安くて濃いワインになった。初日のほうが印象深かった、というのも安ワインらしいところではある。

【1597】Joseph Faiveley Blagny 1er Cru "la Piece Sous le Bois" 2014

 
ブラニィ プルミエ・クリュ ラ・ピエス・スー・ル・ボワ [2017] フェヴレー
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
 このワインは、コート・ド・ニュイのなかでもマイナーなエリア、ブラニーのもの。ブラニーは、白ワインの場合は隣のムルソーに名前が変わったはずで、赤ワインだけがブラニーという名前で出てくるとかなんとか。一体どういうワインなんでしょうか。作り手は、フェヴレ。
 
 若いワインなので、ちょっとデキャンタしてからの試飲。
 
 まず見た目。まだ青紫色っぽさの残る、とても若いピノ・ノワールの色。透明感があり、よく輝いている。香りは、チョコレートと木材。腐った切り株よりも香木系っぽいが、それにしてもオーガニックなというか、バイオな雰囲気が漂っている。そうだ、沼の匂いというか。
 
 口をつけてみると、タンニンのきつさに驚いた。ワインが軽くて酸味がとても爽やかなところに、かなりしっかりとしたタンニンが伴っていて、突出している。果実味は、アセロラや桑の実を思わせつつも、新鮮なイチゴを思わせるところもあり、なかなか。ただ、タンニンがやっぱり強いなー。寝かして熟成させなかったのがいけないのだろうけど。
 
 しかし、数時間もたつとココアパウダーを磨り潰したような&梅のキューンとした香りが、深くて濃くて驚きがあった。酸味が増すのでなく、甘味が増すような方向に変わっていき、穏やかな風味に切り替わってきた。雨の日を思わせるような、憂いすら帯びてきて実に楽しい。
 
 既知のワインでいえば、何が近いんだろう……。シャサーニュ・モンラッシェの赤ワインが近いかな?コート・ド・ボーヌ(ブルゴーニュ中核地域南部)の既知のワインのどれもあまり連想されない。ボトルで言うと、敢えて言えばこのときのモンテリに似ているけれども、あれに比べれば桐箱のような香りも土の香りも乏しくて、かわりに梅っぽさ、トーンの高い香り成分が強いと感じる。ブラニーという、なんともマイナーな一級畑ながら、これは印象に残る感じがした。半分残して、明日も楽しんでみよう。
 
 ※二日目は、いちごミルクのような香りが強い状態で切り出した。わずかに貧相になった感はあるけれども、バランスは二日目のほうが良かったかも。
 
 ※なんと、冷蔵庫の底から、密封状態で5日間放置されたこのワインがグラス二杯ぶん発掘されたので手で温めて飲んでみた。森の苔ような深い香りと、ジャムのような甘い香りが強まった。口に入れると、そういった風味がもうもうとこみ上げてきて素晴らしい。非常に酸っぱくて閉口してしまう瞬間もあるが、ギューっと甘くてジャムみたいに感じることもあり、苦みが主に感じられることもある。じゃじゃ馬のようなワインだ。端正とは言えないけれども興味をそそるワインだった。
 

【1596】Trimbach Riesling 2014

 
トリンバック リースリング 2014
 
 
 そういえば、最近アルザスのワインを飲んでないなーと思って、大手・トリンバックのリースリングをゲットしてきた。確かめてみると、トリンバックのリースリングは(長ったらしい名前のついた格上以外は)飲んだことが無いみたいなので、どんなものか確かめてみることに。
 
 まず見た目。リースリング、特に非-ドイツのリースリングらしい、透明感のある薄い白ワイン色。香りはさっぱりとした、そして清々しさを伴った、花畑系の香り。白っぽい花畑を連想させるような。青々しさと、ハッカ?とまではいかないけれどスースーした雰囲気がある。
 
 口に入れると、甘~い口当たりだけど、数秒後にはしっかりとした酸味と、辛口系リースリングらしい、ちょっと苦さを帯びた旨味が。それでもって、意外なほど蜂蜜系の風味が差し込んでくる。辛口リースリングのはずなのに、蜜と、ちょっと苦みを帯びた旨味がやけにくっきりと迫ってくる。とてもいいような気がする。ブルゴーニュの白ワインなどに比べれば、価格の割に内容のしっかりしたものを出してきたように思う。明日も楽しみだ。
 
 ※翌日は、前日よりもさっぱりとした味わいと苦みが増して、辛口リースリング然とした雰囲気が楽しめた。ハッカ系のさっぱりとした風味も生きている。蜜も清々しさも健在で、芳醇、というほど複雑なワインではないとしても、旨いものには違いなかった。