北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【1778】Domaines Paul Mas La Forge Estate Cabernet Sauvignon 2017

 
ラ・フォルジュ・エステイト カベルネソーヴィニヨン 2017
 
 このワインは、南仏で安くてお買い得なワインを作っているマス一族の手にかかっているもの。どうせなら定番のカベルネソーヴィニヨンでもやってみるかと思い、久々に購入してみた。
 
 まず色。すごく黒ずんだ紫。カシスリキュールの色調にかなり近いと思う。で、香りはむんむんとこみあげてくるちょっとインクっぽい、というか若干マジックっぽさすらあるインクっぽさ。それと若いカベルネソーヴィニヨンらしいつんとした香り。樽香はちょっと杉っぽいかな?でもインク系のほうが優勢。
 
 口にしてみると、やはりつんとした香り。墨汁よりもインクっぽさと例えるほうがお似合いの、濃いカベルネソーヴィニヨンだ。ボルドーの赤ワインに比べると、果実味と風味の強さで押せ押せな雰囲気。これだと、競合相手は安ボルドーではなく同価格帯のチリワインやオーストラリアワインになりそうな感じだ。だからといってまずいわけでもなく、新世界カベルネソーヴィニヨンのノリでざっくざっくと飲んでしまった。
 
 ※翌日よりもコクとマイルドさが先行していて飲みやすさが増した。ボルドー系安カベルネにちょっと近づいたというか。でも相変わらずインクっぽいワインで果実味はとても強い。自分は得手ではないけれども、新世界の赤ワインが好きな人ならきっと喜べるものじゃないかなぁとか思った。
 

【1777】Kante "KC" Chardonay 2016

 
カンテ カッパ チ チャルドネ
 
 このワインは、イタリア北東部はヴェネチア・ジューリア州で奇妙なワインを作り続けているエディ・カンテの作。なんでも無濾過・無SO2添加だそうで、そのためか、ワインはコルクだけでなく王冠で栓がされている。ここのワインは奇妙でやや値段が高かったけれども、この”KC”シリーズはそれほど高くもなかったし、以前はまったく見かけなかった。なにか経営上の転換があったのかもしれない。
 
 まず王冠を取ってみると、その下にはコルクが。王冠はかざりものだったのかもしれない。で、グラスに注ぐと、色はまずまず黄金色でシャルドネとしておかしくないんだけど、気泡と、ぷつぷつとした何かが渦をまいているのがみえる。液面がべとべとしていて、粒子がみてとれる。濾過していないと、こうなるのか。香りは、シャブリみたいな米ぬか系のやつに、はちみつ系のやつがミックス。シャルドネにしては、少し匂いが籠っているほうかもしれない。
 
 口をつけると、びっくりするほど口当たりが滑らかで驚かされる。グリセリンがきいているってやつだろうか。以前、カンテの「よく振ってお飲みください」だったヘンテコワインに通じるものがある。シャルドネ由来の苦みもあるけれども、それよりはちみつとリンゴといった甘味成分のほうが目立つ。意外に普通のシャルドネだ、北方とも南方ともつかない、平均的なシャルドネ。価格相応では。
 
 ※翌日は、とろとろのワインに。蜂蜜風味が非常に強いことに加え、とろみがあり、かといって緊張感やミネラルもそこそこにある。初日よりも線が太くなったと思う。なかなか。
 
 

【1776】Beatrice et Pascal Lambert Chinon "Achillee" Vieilles Vignes 2012

 
シノン アシレー ヴィエィユ・ヴィーニュ (ベアトリス・エ・パスカル・ランベール)
 
 このワインは、ロワール地方はシノンでつくられる、カベルネフラン100%のワイン。ロワールの赤ワインは割とノーマークで、カベルネフランもあまり知らないので、たまにはやってみようということで。
 
 まず見た目。赤ワインのなかでは「あんこ」に近い色をしていると思う。すこうし青紫に近いカラースペクトルで、やや黒ずんだ、不透明な液体。ワインの「あし」は意外に長い。香りは、すごく酸っぱそうな梅香が立ち上がってきて、そこに、杉系入浴剤の匂いとヨモギの匂いが混じったようなのが来る。カベルネフラン独自の植物系フレーバーと考えてもおかしくなさそう。それと少しだけ動物のふんのような匂いがするかもしれない。
 
 口をつけてみると、香りにふさわしい酸っぱい味が口のなかいっぱいに広がる。酸っぱいんだけど意外にミルキーというか、口当たりがソフトでタンニンがふっさふっさしている(タンニンが無いわけでなく、それなり口が収斂している感覚はあるけれども、つっかかってくるようなものではない。)。味わいのなかに杉系入浴剤やヨモギの匂いが染み渡ってきて、独特な後味を形成している。ただ、飲み進めるうちに酸味が厳しく感じられるようになってきた。動物のふんみたいな匂いもちょっと苦手。初日はあまり飲まずにダウン。
 
 ※二日目。酸味が厳しかったので、グラスをブルゴーニュ用の大振りグラスに変更したところ、少し和らいで飲みやすくなった。それでもヨモギ・馬糞系の匂いは健在で、ちょっと不慣れな感じではあった。
 

【1775】La passion Grenache Vieilles Vignes 2013

 
ラ パッション グルナッシュVV ヴィエイユ ヴィーニュ 2013
 
 このワインは、以前に飲んだことのある「ラ・パッション」のヴィエイユ・ヴィーニュ版。ということは、より古い木からできたワインだけで構成できた上位バージョンってことになる。元のラ・パッション自体がまずまず飲める安ワインだったので、こいつも基本的にいけるでしょう。
 
 グラスに注いでみると、不透明で黒々とした赤ワイン色。さすがにグルナッシュという感じがする。香りは梅系お線香のものに加えて甘くてほっこりとしたおはぎのようなフレーバーを伴っている。あと、わずかに汗っぽく感じられるかもしれない。
 
 口に入れると、甘味をあまり伴わない、意外に辛口ワイン然とした風味。果実味はあるけれども甘さ控えめ、苦みをいくらか伴い、タンニンはふっふさで厳しさは感じない。いくらか植物の茎のような風味、さきほどの汗のような風味が残っていて、高級、という感じとはちょっと違う。田舎っぽいグルナッシュだ。
 
 ※二日目は、果実味がジャムっぽさを帯びてきて、割とありがちな南仏系赤ワインになった。初日も二日目も特筆するようなワインではなく、まずくはないけれども特筆するようなグルナッシュでもない感じ。こういうのを飲むと、ローヌのジゴンダスやシャトーヌフパプのグルナッシュたちの卓越が逆によくわかる。
 

【1774】Maison Louis Latour Meursault-Charmes Premier Cru 2007

 
ルイ・ラトゥール ムルソー シャルム
 ※リンク先はヴィンテージが異なります
 
 ムルソー、です。しかも2007年。
 
 まず見た目。色彩はムルソーとしては決して濃い部類ではなく、割と普通に黄色っぽい白ワイン色をしている。「山吹色」「黄金色」といったワードはこれからは想像できない。香りは……ぶわっと沸き上がる蜂蜜!それからフルーツポンチ系の香り。ムルソーというにはちょっと南のシャルドネっぽさが強いというか、まるでヤルデンのシャルドネみたいだ。カスタードっぽくもある。なんという直球。
 
 で、口に入れてみると意外なほど酸っぱい。香りは南のシャルドネ然としていても、酸味はとても爽やかでしっかりしている。2007年のブルゴーニュ白ワインは全般的に酸が素晴らしく綺麗で活き活きしていると感じるけれど、こいつもそう。二口、三口と味わってようやく、活き活きとした酸にこってりとしたバターっぽさやクッキーっぽさが乗ってくる。それと塩味。このワイン、塩っぽさとミネラルっぽさがある。石灰岩ぽいバッタもんぽくなくて、もっとコート・ドール直販かシャブリかという感じの。かと思えば梅や茸の匂いも漂ってきたりして、なかなか頑張っている。抜栓してすぐよりも数時間経った姿のほうが高級白ワイン然としていて、見所がある。ムルソー一級、ましてやシャルムという畑のなかでは値の張らない部類だけど、2007年というブルゴーニュ白ワインの良ヴィンテージのおかげか、すこぶる面白い出来映えだった。
 
 ※二日目。バターっぽさやクッキーっぽさ、甘味はちょっと退いたかわりに、塩っぽさとミネラルが初日より目立つようになった。きのこも健在、酸はあいかわらず良質。なるほど納得な白ワイン。満足があった。
 

【1773】Clean Skin Riesling "Waipara" 2016

クリーンスキン(ノーラベル):[2016or2017]リースリング "ワイパラ"
 
 このワインは、ラベルが最小限の、バルク品っぽいニュージーランド産のリースリング。見たことも聞いたこともない。さて、なんでしょうか。
 
 見た目は本当に普通の白ワイン。シャルドネの大半に比べて薄い色をしている。香りは、初手ではライチっぽい甘い香りがぶわっと来た。辛口リースリングではこういうタイプもなくはないけれども、かなり香りが強いほう。その奥から花畑のいい匂いが。
 
 口に入れると、たっぷりたぷたぷオイリーな口当たり。すんごくべっとりしていて、ライチっぽい甘さに加えてグレープフルーツっぽい苦み、でもって後味もねっとりとしている。それでいて爽やかなのはさすがの辛口リースリング。飲み進めると、菖蒲の葉のような匂いやスパイシーな刺激が加わって、この価格帯のリースリングとしては破格の内実。たとえばアルザス産でこのクオリティを求めたら2000円はくだらないように思う。雑味も感じられず、終始美味。これは良い買い物をした。
 
 ※二日目は、香りと味の強さがいくらか失われた。悪いというほどではないのだけど。でも、飲むなら断然初日。