エチエンヌ・ソゼ ピュリニーモンラッシェ ラ・ガレンヌ
ブルゴーニュワインは異様に値上がりしていて気楽には飲めない飲み物になってしまいつつあるけれど、まあその、たまには飲んで様子を思い出しておきたいと思い、洞穴から取り出してきたのは、エティエンヌ・ソゼが作っている「一番安いピュリニーモンラッシェの一級」。ほかにもシャン・ガンだのシャン・カネだの色々な一級畑があるけれども、このガレンヌは格がちょっと下。でもって、2011年というヴィンテージもあまり大したことはなかったかと思う。
グラスに注いでみると、意想外に金色。ピッカピカの金色ワイン。で、香りは蜜と蝋の匂いがグラスの外側にもぶわーっとあふれてくる。おお、すごい、こういうのはイスラエルのお買い得シャルドネ(ヤルデンシリーズ)には無い。特級ほどではないにせよ、大理石の床+蜜壺という連想が浮かぶやつが来る。
口に含むと、まずはまったりと甘い。少し杏がかったニュアンスやキノコっぽいニュアンスもあって、それなり熟成しているとみた。酸の後から、シャブリ一級もかくやというミネラルな後味が口のなかに残り、これがワインの骨格をかたちづくっているのがわかる。それでいて、果実味が過不足なく伴っていてこれが気持ち良い。押しつけがましいほど果実味が強いのでなく、抑制の利いた、適度な果実味で酸味とのバランスがとてもいい。ややスリムなワインに仕上がっているけれども、ひたすら端正。後半には梅の香りがふんわりとよぎることも。うん、素晴らしいですね。値上がりするのは致し方ないところか。
※翌日は少しスリムの度が過ぎて、高いシャブリに近い飲み心地になってきた。あるいは、ちょっとチープなコルトンシャルルマーニュといったような。このあたりはヴィンテージの弱さを反映しているのだろうけれど、それでも並みのシャルドネよりはよっぽど香り高いし品も良い。ガレンヌ、けして悪い一級ではないとは思うけれど、昔はこれが半額ぐらいで買えたことを思うと、いろいろ思うところはある。
【1811】Cline Cellars Sonoma County Syrah 2016
シラー “ソノマ・コースト” ソノマ・カウンティ [2016]
見た目はやや青紫色をしていて、若々しい印象を受ける。若いシラー、というような。香りはマジックみたいな揮発臭がしっかり。その奥から、プラム系、プルーン系の香りがあがってくる。
口にいれると強烈なマジック!香りそのまんまの、プルーンとプラムをまぜまぜしたような味がする。タンニンは、この手のワインのなかでは穏やかなほう。とはいえ全体的に力強いワインなのでタンニンが相対的に目立たないだけかもしれない。
やがて伸びてきたのは果実味。爆発するジャムとでも言いたくなる、やけにじゅくじゅくとした果実味がやってくる。ここからは果実味がとにかく印象に残る展開だった。
※二日目は果実味がいくらか落ち着いたけれどもジャムっぽさ、それに伴う重さは健在。やや一本調子かも。
ワインブログを始めると、ワインがわかるようになり感覚も鋭くなる
はてなブログで今週のお題:『ブログ初心者に贈る言葉』 というのがあったので、今日はワインブログについて雑談をしてみます。
【もくじ】
趣味のためにブログを書く人はたくさんいますが、私も十年ほど前からワインブログを書くようになりました。
で、実際に書いてみるとワインのことがどんどんわかるようになって嗅覚や味覚も鋭くなったので、「ワイン好きな人はワインブログ書こうよ!」とおすすめしてみる次第です。
1.ワインの写真を撮ろう
ワインはバリエーションの豊かな飲み物で、味や香りや色彩がどれも違っています。ただ、その違いがわかるようになるのはちょっと大変で、アルコールが入っていい気分になっていると「あれば美味かったなぁ……」以上のことが思い出せなくなります。
これでは、何本ワインを飲んでも「美味かったなぁ……」から先に進めません。
でも、ワインのボトルの写真を撮っておいて、ついでに感想を一文字ぐらい添えておくと、「あの時美味かったワインはこれだ!」という記録が残ります。
記録が残るということは、記憶に残るということでもあります。
写真を撮って一行文章を添えるだけで、自分が飲んだワインのことが格段に記憶に残るのです。
また、ブログに残した記録のおかげで、美味しかったワインについて後で調べて買うことだってできます。
「まず、写真を撮って、一行だけ文章を添える」
これだけで、ワインのことがかなりわかるようになるはずです。とりわけ、自分が好きなワイン、自分が愛着を持っているワインをはっきり意識するようになるでしょう。
日本酒やビール、ラーメンなんかでもたぶん同じ。ブログを書くと食道楽が変わるのではないでしょうか。
2.欲張りな人は味や香りを書きとめよう
でもって、もっと欲張りな人はワインの味や香りを書きとめてみると、ますますワインのことがわかるようになります。
どんな色のワインなのか。
どんな香りが漂ってくるのか。
口に入れたらどんな味がするのか。
たとえばキイチゴ?
それともイチゴミルク?
それともチョコレート?
スパークリングワインにレモンやすだちの雰囲気を感じたことはありませんか?
渋くてしようがない赤ワインもあれば、あまり渋くなかった赤ワインもありませんか?
そうやって色や香りや味のことをブログに書き残しておくと、ますますワインの記録が残り、と同時にますますワインの記憶も強化されていきます。
20本、30本と回を重ねていくと、白ワイン/赤ワインそれぞれにいろんなバリエーションがあるさまがおのずと見えてきて、「自分の好みのタイプ」もだんだんクッキリしてくるのではないかと思います。
どんどん好きなワインを見つけて、どんどん記録していきましょう。
3.ワインブログを書いて得られたボーナス効果
私はワインのことをブログに書いているうちに、いくつかの、想定外なボーナス効果を獲得しました。
ひとつは、ワインを真面目に飲むようになったこと。
なんやかんや言ってもワインはアルコール。
ぼんやり飲んでいるとたちまち酔っぱらってしまいます。
でも、「ワインのことをブログに書く」と思うようになると、色・香り・味を憶えていようと頑張るようになります。ワインを飲む行為がただの酔っ払いではなく、ワインを理解・検証するためのチャレンジに変わるのです。真面目に飲む」と言って抵抗感があるなら「ワインと真剣に向き合うようになる」と言い換えてもいいかもしれません。少なくとも、ストロングゼロをがぶ飲みするようなワインの飲み方にはならないはずです。
もうひとつは、味覚や嗅覚が鋭くなったこと。
「このワインは梅っぽい匂いだな」「このワインは蜂蜜クッキーの香りがする!」なんてことを続けていると、おのずと味覚や嗅覚が研ぎ澄まされていきます。私の場合、ワインブログを書くようになってから、ワインだけでなく、自然界のいろいろな味や匂いに対しても敏感になりました。
バラやアヤメやスイカズラの芳香、雨上がりのアスファルトのしっとりとした香り、有機化合物のケミカルで個性的な匂い、などなどを噛みしめるように嗅ぐようになり、食べ物もしっかり味わって食べるようになりました。
ワインブログを書くようになってから、味覚と嗅覚の感度がだいぶ向上したように思われるのです。
みっつめに、語彙力が豊かになったこと。
ワインの味や香りを言語化するのはちょっと難しく、ブログに書く際には「どう書けばいいのかな」と頭をひねることになります。
一応、ワインスクールの世界では「このワインのこの香りは、こういう言葉で表現するのが共通ルール」みたいなものがありますが、素人はそんな共通ルールを知っておく必要はありません。
それでも、自分が感じた体験を自分の言葉で書き残すためにも言葉が必要になるので、うんうん考えることになります。
たとえば私の場合、「大理石の床に蜂蜜壺をひっくり返したような」とか「パイナップルの缶詰の液体みたいな」といった、自分専用の表現をワインブログで使いますが、そうやって自分専用の表現を探しているうちに、語彙力が増えたり、言い回しが豊かになったりした部分があります。
もちろんこれはワインブログに限ったものではなく、日本酒ブログでも、アニメブログでも、登山ブログでも同じことでしょうけど。
ブログを書くことによって、趣味がより深まって、文章も豊かになる──このあたりが趣味ブログの醍醐味じゃないかなぁ……と思います。
【1810】Barone Cornacchia Mointepulciano d'Abruzzo "Casanova" 2014
バローネ・コルナッキア モンテプルチアーノ・ダブルッツォ 2014
今日の夕食はトマト煮込みを中心とした軽めのもの。だけど赤ワインをあわせたい気分で、じゃあイタリア旨安赤ワインジャンルの、モンテプルチアーノ・ダブルッツォをあてるとちょうど良いかなと思ってセレクトしてみた。
まず見た目。不透明、かつ少し青みがかかった黒々とした赤ワイン色。へたなメルローやカベルネソーヴィニヨンよりも濃いんじゃないかというような。香りは、ツーンとした線香-葡萄系の香りかなと思いきや、グラスに鼻を近づけると、イタリアワインにはありがちな、あの軟膏のような匂い(これは、キアンティクラシコにもあると思う)を伴っている。やすいモンテプルチアーノ・ダブルッツォにありがちな生臭さは今は感じられず、結構いけている雰囲気。
口をつけると、目の覚めるような果実味。ちょっとヴァイオレット、ちょっと線香っぽさは伴っているけれども、「果・実・味・!」と力強く訴えてくるフレッシュな味にびっくりさせられた。タンニンは比較的穏やかで親しみやすく、非常にわかりやすい。難しいところがひとつもないワインだ、これはこれでいいんじゃないでしょうか。
※二日目は、あの過剰と言ってよいほどの果実味がちょっと落ち着いて標準的な赤ワインに近づいた。とはいえ、飲めないレベルには遠い。高級赤ワイン路線に凝るのでなければ、やはりモンテプリチアーノ・ダブルッツォは「飲める」ワインだ、デイリー用に量産するにもアリだと思う。
【1809】Luigi Righetti Amarone della Valpolicella 2013
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラシコ [2013] ルイジ・リゲッティ
久しぶりにアマローネを選んでみることにした。こいつはお買い得感満点のルイジ・リゲッティが作っているベーシック品。ものすごくはないけどだいたいおいしくて変化もまずまず、なワインだったはず。
見た目はとても濃い赤茶色の液体。グラスに注ぐ段階で甘いチョコレートっぽい香りがぷんぷん漂いはじめて嬉しい。かなりアルコール臭が強く、ニスなどの有機化合物っぽい匂いを伴っている。
口に入れると、強烈に甘酸っぱい果実味にジャムの濃い甘さ、そこにビターチョコレートのきわみのような苦みがグワーっと盛り上がってくる。最近、この価格帯の濃い系赤ワインはローヌ産をたくさん飲んでいたけれども、やっぱりアマローネは別の顔つきをしている。酸味は比較的おだやかで、しっかりとした苦みがワインの構成要素として大きいところはいかにもなアマローネ。いつまでも口のなかに苦みとジャムが残り、身辺にチョコレートとニスが漂うのは面目躍如。二杯目になると香料・線香系のトーンの高いフレーバーが漂い始めた。ベーシック品とはいえ、やっぱりアマローネ。良いワインです。
※二日目は、少し口当たりがミルキーになってきて飲みやすい路線になった。迫力は昨日のほうがあったから、飲むなら初日。でも、アマローネはアルコール度数が高いので、ある程度人数がいないと一日ではあかないと思う。
【1808】Gruss Cremant d'Alsace Brut (N.V.)
クレマン ダルザス ブリュットNV ジョセフ グリュス エ フィス
人が集まったおりに出てきたスパークリングワイン。ものはアルザスでつくられたクレマンなので、そこらのスパークリングワインよりは期待したいところ。
グラスに入れてみると、まずまず黄金色に光っていて、泡のたち具合は中庸。香りは、リンゴと漬物とイースト系が匂ってきて、まるでシャンパーニュのよう。かなり立派ななりをしている。
で、口に入れるとリンゴ!青リンゴを想像させる爽やかなグリーン系果実味と苦みが来て、そこに漬け物風味が幾らか乗っている。これは、へたな安シャンパーニュよりもシャンパーニュらしいような気がする。この苦みとグリーン系果実味は、リースリング由来なんだろうか? それでいて重くて飲み飽きるような風でもない。これはよくできたクレマン(ダルザス)だと思う。かなり良いのでは。