北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【1938】Chateau le Roudier Bordeaux Superieur 2016

 
シャトー・ル・ルディエ [2016]
 
 このワインは「気持ちを落ち着けたい時の味方」だと勝手に思っているボルドーの安ワイン。確か、同じようなタイプのワイン3点送料無料セットで買ったように記憶している。ラベルの裏には「メルロー75%、カベルネフラン15%、カベルネソーヴィニヨン10%」と記されている。おっとメルロー主体なら気持ちが落ち着くタイプじゃないかもしれないぞ?
 
 まず見た目。かなり濃いワインレッドで不透明。このボトルは割と長い間立ててあったので、おりが舞い上がったということはないはず。香りは、煮豆とピーマンがふんわりと漂ってきて、そこから檜風呂を連想する。折り目正しい安ボルドーっぽくてなんだかいいぞ。
 
 口をつけてみると、果実味がとにかくぐしゃりと入ってくる。第一印象が果実味ってあたりは安メルロー! という感じがする。甘さは感じられるけれども苦みやコーヒー飲料的な雰囲気のようが優勢で、甘味で堕落したワインという風でもない。ピーマンと果実味の間から、ほんのりと煙突風味が漂ってくるのも嬉しい、メルロー主体ながら安ボルドーらしさがあり、気が急かなくていいように思う。こういうワインが今日は飲みたかったんだ。
 

【1937】Fantini Terre di Chieti Chardonnay 2017

 
ファンティーニ (ファルネーゼ)シャルドネ 現行
 
 最近、世界各地のシャルドネってどんな味だっけ?と確認することに喜びを感じているんだけど、今回はアブルッツォ州ファルネーゼ傘下のはずのシャルドネを。お値段手頃なデイリーワイン。
 
 まず見た目。この価格帯のシャルドネにしては照りのある、ちょっと黄金色っぽい色彩。ただ、色はあまり濃くない。香りは、花畑と蜂蜜! なんと蜂蜜らしさがある。それでも清楚系というか、台所洗剤や花の蜜に近い爽やかなフレーバーが中心。
 
 口に含むと、ぎゅっと酸味が。ただしシャブリみたいなレモンまっすぐな酸味ではなく、もうちょっと豊満な、チリワインめいた果実味が来る。意外に南国系シャルドネだぞ、これ。別にまずいとかそういうのじゃないけれども、今日、期待したかったのはこういうのじゃなくてもっと北のシャルドネだったのでかみ合わない印象を受けてしまった(ワインが悪いわけじゃなく)。
 
 ※前日の経験から、二日目はワインの温度を下げて楽しんだ。蜂蜜らしさが失われた代わりに爽やかフレーバーが前景に出て、すいすい飲めるスタイルに。南のシャルドネは温度が少し低いほうがやっぱり楽しめる。
 

【1936】Produttori del Barbaresco Barbaresco "Muncagota" 2008

 
バルバレスコ リゼルヴァ ムンカゴタ 2014 プロデュットーリ デル バルバレスコ
 ※リンク先はヴィンテージが異なります
 
 こないだ、バルバレスコの前座としてランゲ・ネッビオーロを飲んでみたけれども、今日は本命のバルバレスコ。メーカーは手堅くバルバレスコ協同組合、それなり歳月を経たものを引っ張り出してきた。この”Muncagota”という畑は初めて。昔はモッカガッタという呼び名だったものが、方言に忠実にムンカゴータになったとか。
 
 まず見た目。先日のランゲ・ネッビオーロに比べてはっきりと赤茶色が濃い。透明度は高いけれども赤茶色が深くないわけでもない。で、香りはアーモンドがすんごい勢いでにおいたち、グラスに鼻を近づけると、アーモンドの香りをかきわけてニスや香料や腐った切り株のような香りが漂ってくる。だけど第一印象として、とにかくアーモンドを押してくるのが面白い。
 
 口に含むと、すんごい香料、すんごい果実味。この香料&果実味は、まるで少し値段の良いシラーみたいだ! タンニンがまだしっかり残っていてなかなか渋く、果実味はミルキーでありつつ舌ざわりがザラザラしていて、お汁粉やぜんざいのようでもある。酸味はもちろんしっかりしているけれども、その酸味がぜんざいやミルキーや果実味と釣り合っていて「酸っぱいワイン」という印象はあまり受けない。グラスを口に運ぶたび、森の香り、ブドウの香り、ナッツやアーモンドの香りが交互に鼻をよぎる。飲み頃ドンピシャの赤ワインにありがちな、ひらめくようなエネルギーをこいつからは感じる。二杯目ぐらいになると鉄っぽさと力強さがググッとせりあがってきて雄々しいワインにもなった。ここまで立派に振る舞ってくれるワインはブルゴーニュの一級でもそうはいないわけで、とてもいい時期に抜栓できたっぽい。いいワインをいい時期に飲んだぞ!
 
 この風味の多彩さとバランスの良さをみると、ランゲ・ネッビオーロが前座でバルバレスコが本命であることがよくわかる。正直、バローロバルバレスコ系はブルゴーニュ赤に比べてわかりにくくて敬遠していたけれども、こいつを飲んでちょっと考えさせられた。更に高名なメーカーの飲み頃のバローロバルバレスコならどんなにすばらしいだろうか。でも高名なメーカーのバローロバルバレスコを素人である自分が扱いきれるものだろうか?ううむ、でも捨ておくには惜しい。また出会いたいよこのワインに。
 
 ※翌日は少しパワーダウンしてしまったがアーモンドや腐った切り株風味は健在、十分に飲める内容。翌日の内容からしても、飲み頃真っ盛りだったと思われる。
 

【1935】Cascina Chicco Lange Nebbiolo 2017

 
ランゲ ネッビオーロ 2017 カッシーナ キッコ


 冷えてきたのでバルバレスコでも飲もうかなと思うのだけど、いきなりバルバレスコではなく、格下のランゲ・ネッビオーロを飲んでみたい。けれども意外に売られていなくて、どうにか手に入ったのがこれ。ネッビオーロ種の練習としてまずは飲んでみることに。
 
 まずグラスに注いで見た目確認。透明度の高い、ちょっと明るく茶色がかったワインレッド。これだけ若いワインなのに茶色がかっているあたりも含めて、ネッビオーロっぽい。香りは、漆喰+アセロラブルゴーニュの赤ワインでもアセロラって比喩をよく使うけど、こいつはニスとアセロラと腐った切り株が合体したような複雑な香りで、ブルゴーニュの赤ワインとは趣が違う。しいてブルゴーニュの赤っぽく考えると、アンヌ・グロの赤ワインが似ているけれども、ニス系有機物の香りがこちらはもう二枚ほど強い。
 
 口に入れると、もうこれは全くブルゴーニュ赤(ピノ・ノワール)とは違う。断然濃くて、飛び上がるほど渋いタンニンが口のなかいっぱいにぐわーっと広がる。腐った切り株にフレーバーにこれはマッシュルームでも足したような雰囲気が口のなかに広がるぞ?あと酸味が激烈。このワイン絶対にphが低いに違いない、へたな白ワインよりもきついと思う。にも拘わらず、酸味よりもコクや果実味のほうが優勢、そこにぶわーっとタンニン。味わいも香りも豊かだけど、タンニンのものすごさと強烈な酸でじゃじゃ馬度が高い。悪いワインじゃあない、というより味わい甲斐はあるけれどもイージーではないぞこいつは。で、料理とは無類の相性をみせる。肉料理はもちろん、案外、味噌汁なんかとも喧嘩しない。御飯のお供としてはいいと思う。さすがに刺身にはまったくあわないだろうけれど。
 
 ※二日目は、タンニン以外はちょっと落ち着いてしまった感じ。まずくはないけれども昨日のほうが面白かった。
 
 

【1934】Jermann Chardonnay 2017

 
イエルマン シャルドネ 2018
 ※リンク先はヴィンテージが異なります
 
 このワインは、イタリア北東部、フリウリ=ヴェネチア・ジューリア州のなかでも信頼しているイエルマンのシャルドネ。昔はこれが2200円ぐらいだったのに、今では1.5倍ぐらいになっている。この地域のワインはお買い得だったと思うので、知られてしまった以上、ある程度は仕方ない気がする。前回飲んだのは10年前で、イタリアワインからワイン稽古をはじめたばかりの頃。
 
 グラスに注ぐと、あまり色の濃くない、ちょっと黄金色だけどじゅうぶんに薄い白ワイン色。これを見て高級系シャルドネを連想する人はいないと思う。香りは、ほんのり花畑&蜂蜜クッキーが匂い立ってくるような。ちょっと冷やしすぎているせいかもだけど、爽やか系フレーバーのシャルドネといった印象。 
 
 口に含むと、青リンゴのような酸味のくっきりとした、目の醒めるようなシャルドネシャルドネのなかでは、これはマコンのシャルドネのような、爽やか系をはっきり狙った品なんじゃないか。いくらか温度が低いとはいえ、ここまで爽やかだとびっくりしてしまう。直近だと、リュリーのシャルドネに近いけれども、こちらのほうがきめが細かく集中力がある。温度が上がってくるとこってりした飲み応えを伴ってきてこれもまたいい。ステンレスタンク系のシャルドネかと思ったら、サイトをみるとバニラが云々とあるので樽も使っているのかも。このメーカーはもっとこってり路線の「ワードリームス」という上位シャルドネも創っているので、これがさっぱり路線につくられているのはわかる気がする。それでも良い出来だ、蜂蜜クッキーとリンゴをたっぷり楽しみました。
 
 ※二日目は蜂蜜クッキーさが弱くなってしまった。そうなると、平均的なマコンのシャルドネになってしまう……かと思いきや、植物系エキスがますます強まって飲み応えがある。現在のこのワインの価格帯を考えた時、比肩すべきは(もう少し割高だけど)ブルゴーニュシャルドネの雄、コント・ラフォンやルフレーヴのマコンになるだろうけれど、それらに比べるともうワンランク植物重視-リッチ軽視なのかもしれない。イスラエルコスパシャルドネ、ヤルデンに比較すると、こちらのほうがウケは悪そうだけどこちらはこちらで植物系エキス重視の明確な表現があるから優劣はつけがたい。
 

【1933】Di Majo Norante Falanghina 2018

 
ファランギーナ テッレ デリ オスチ 2018 ディ マーヨ ノランテ
 
 このワインは、以前に田舎くさい赤ワインを創っていると感じたモリーゼ州の作り手のワイン。田舎くさくなければいいワインの潜在力ありそうなんだけど、白ワインではどうだろう。今回は南イタリアでしばしばつくられているファランギーナでつくられた白ワイン。
 
 抜栓すると、ファランギーナにしてはえらく色が濃いと感じる。香りは……うっ……これは「古くなった化粧品」みたいな臭いだぞ? 昭和時代の、普段は化粧しない人が久しぶりに化粧を取り出したら臭うような、あのきっつい臭い。
 
 味は濃い。カンパーニャ州などの、ごつい酸味爽やかな、一般的なファランギーナとは全く異なる、エキスどくどくな風味。なんだこれは。一体どうやったらこんな味になる? やはり土っぽさ? うーん、赤ワインの時はどうにか肯定的に飲めたけれど、こいつはちょっと大変だぞ。えぐみがあって酸味が足りない。メロンの「皮」みたいな風味がある。ファランギーナという、爽やかさが身上のぶどう品種をどういじったらこんな姿になってしまうんだろう。このメーカーの田舎くさいつくりが非常に悪い形でワイン化していると感じる。これは不合格。
 
 ※二日目。いくらか飲めるようになったけど、新世界でつくられた最下級のシャルドネとどっこいどっこいなぐらいえぐい飲み物になってしまっている。このワインを購入したお店は大変贔屓にしているけれど、そのなかではこのワインが抜きんでて目下ワーストワン。痛んでいるという感じでなく、ワインの製法じたいにとんでもない問題か勘違いがあるように思う。たぶんメーカーが悪い。