北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2307】Masciarelli Montepulciano d'Abruzzo 2017

 
マシャレッリ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ 2017
 
今日の夕食は焼き鳥、サバのフライなど。こういう時にはあまり値が張らず、威圧的でなさそうなワインを選びたい。ということで、イタリアはアブルッツォ州の大手メーカー、マシャレッリのつくるモンテプルチアーノ・ダブルッツォに登板いただいた。以前に比べて少し値段が上がったような気がするけど、クオリティは果たして。
 
まずグラスに注ぐと、ちょっとこげ茶色入っているような黒々としたワインレッド。もっと青紫色っぽい色調かと思っていたので少し驚いた。香りは、少しマジックインキに近いような揮発臭を伴って、スモモを思い出すようなすっぱ気持ち良い香りがわっと立ち上った。モンテプルチアーノ・ダブルッツォ然としている。楽しみだ。
 
口に運ぶと、軽々とした飲み口、さわやか葡萄酒系。このワインは酸味がかなりしっかりしていて、すっぱさは、少し前に飲んだファルネーゼのモンテプルチアーノ・ダブルッツォと比較してこちらのほうが強い。さりとて酸っぱいだけのワインかと思いきや、振り返れば果実味の充実したところもあり、頭の軽いワインというわけでもない。焼き鳥などの食事との相性は持ち前の酸味のおかげでばっちり。肉料理と一緒がいかにも似合っている。イタリアの日常酒ワインのひとつとして鉄板の選択ではある。難点があるとしたら、こいつの価格が高くなってしまったこと。でも円が弱い昨今、あまり文句がいえる気もしないし、品質を思うと……。
 
※二日目。なんと、森の下草っぽさ、それと奈良漬けみたいな漬物系のフレーバーが強まって俄然、面白いワインになった。軽々とした飲み口はモンテプルチアーノ・ダブルッツォのままだけど、香りはもっと上級のワインみたいな雰囲気。面白半分に漬物を合わせてみたのだけど、これが案外と合う。ということはだ、このモンテプルチアーノ・ダブルッツォには底力があり、幾分かだけど、熟成可能性があるような気がする。なるほど、だから値段が高くなったわけか。得心がいったぞ。
 
 

【2306】Colpasso Pinot Grigio Terre Siciliane 2019

 
コルパッソ ピノ・グリージョ 2019
 
このワインは、シチリアでつくられたピノ・グリージョ。ピノ・グリージョはイメージ的にもっと北の地方の白ワインって印象があるけど、カリフォルニアなどでも上手くできているのでシチリアでうまくできない道理もない、気がする。そこで今日は簡単な夕食のお供としてやってみることにした。
 
まず見た目。だいたい透明で、うっすらと麦わら色がかった白ワインだ。香りは台所洗剤に少し葱のニュアンスが混じったような楽しみなもの。こういう植物系の香りがちょっとオイリーな雰囲気を伴いながら今回はにおってくる。
 
口に運ぶと、そうした植物系の香りがそのまま味に具現化したような、爽やかいっぱいな味が炸裂する。酸味は軽く、ややボリューミーなワインではあるけれども、冷やしてのむぶんに問題ないし、冷やして飲めってことでしょう。それにしても、葱の強いワインだ。このワインがもう少し悪くなると、たぶん玉ねぎっぽくなって、白ワインとしてはなんだかえぐい変なものになっちゃうのだろうけれども、ありがたいことに葱に留まってくれている。おいしくいただけました。
 
※二日目。葱っぽさが弱くなり、ちょっとつまらない感じになってしまった。あとチープで酒臭い。このワインは初日にいただいてしまうのが吉なのかもだし、品種や価格帯からいってもそう予想しておかしいとも思えない。逆に言えば、弱点を初日はきれいに抑えていたわけだ。価格帯を考えれば、これは優秀なことだと思う。このメーカーのワインは他にもいろいろあるので調査してみたい。
 
 

【2305】Saint Cosme Little Jame's Basket Press Red (N.V.)

 
サンコム リトル ジェームズバスケット プレス レッド
 
このワインは、ローヌの作り手、サンコムが作っている廉価版のローヌ赤ワインで、ヴィンテージの記載もない。けれどもこれが意外に旨いことは過去に実証済みで久しぶりに飲みたくなったので用意した。
 
グラスに注ぐと赤茶けた感じの濃くて黒っぽい、透明度の低い赤ワイン。若いはずなのに茶色っぽい色調なのが特徴的だ。香りは、お線香のような紫系の香りとハムを連想させる香りが二段重ね(それらはなんだかちょっと遊離している)のが特徴。嫌いな香りではなく、ハムがまた、このワインにたくさん使われているだろうグルナッシュを連想させる。
 
口に運ぶと、口当たりは柔らかで、じゅくじゅくの果実味が結構ビターな風味とともに来る。ビターさは、コーヒーに譬えるよりエスプレッソに譬えたほうがいいぐらいにビターだ。甘い、とはさほど感じないけれどもワインに重量を感じるので糖度は案外と高い予感がする。少し飲み慣れると、より線香然とした、格上のコート・デュ・ローヌや少し値段の高いガルナッチャ(注:スペイン産のグルナッシュ)のような雰囲気になって、なかなか良い。このワインはもう少し甘きに流れて、うまいけど集中力不足みたいな印象があったけれど、今回は高いところでまとまっていて良い。まろやかな口当たりに慣れてくるうちに、口にはりつくタンニンが少し気になるようになってきた。でも、これぐらいのほうが食べ物とは上手に付き合ってくれる。
 
※翌日のほうが飲みやすい。ただ、ローヌ然としたたたずまいからは少し後退。
 

【2304】Kante Dosaggio Zero K K (N.V.)

ドサージュ ゼロ カッパ カッパ NV カンテ

 このワインは、ラベルと名前で勘違いをして買ってしまった、エディ・カンテの作っているスパークリングワイン。本当はシャルドネを買ってみたかったのだけど、ラベルが最近変わったのか商品整理があったのか、目当てのものでなく、スパークリングワインを頼んでしまったのだった。まあいい、それはそれで興味深い対局ではある。
 
 まずシャンパングラスへ。勢いよく泡が吹きあがってくる。色はあまり濃くなく、シャンパン互換系としては白っぽい。粘りがあるのか、水面にできる泡がちょっとビールっぽい。香りは、初手では爽やかな植物フローラルな感じで割と普通。ごっつい香りが来るわけではない。
 
 口に運んでみると、甘酸っぱいリンゴの風味が口のなかに炸裂するのだけど、これが刺々しい感じじゃなく、まったり・余裕のある感じがするのが良い。飲んでみれば、苦みもそれなりにあるし適度な重量感もある。で、リンゴが本当に濃くて、その濃さに舌ざわりのまったりとした部分がある。クリュグのようだと言ったら言い過ぎだけど、そのまったり感の廉価版といった舌ざわりがある。このあたり、同じメーカーのシャルドネに相通じるものがある。飲み進めると、リンゴが青リンゴになってくる感じがあって、さっぱりしてきた。これは? 買ったお店のサイトを見てみると、このワイン、シャルドネにマルヴァジアを混ぜて作ってあるとのこと。このさっぱり感はマルヴァジア由来なのかもしれない。
 
 後半になると梅香が合わさってきて雰囲気が良い。酸味もいや増し、飲みごたえがある。ははあ、面白いスパークリングワインだと思う。いいものを飲ませてもらった。

【2303】Dominique Laurant Marsannay Vieilles Vignes Bio 2018

 

 
このワインは、ドミニクローランが作っているマルサネ。マルサネって、コート・ドールの北側(コート・ド・ニュイ)のなかではマイナーな土地でロゼワインの土地、ってイメージがある。でも、ドミニクローランはマイナーな土地でもちょっと豪華にワインをつくる感じがするので、こいつも何かやってくれるかもしれない。ちょっと部屋の温度が高めだったので少しだけ冷やしてのトライ。
 
まず色。少し赤茶色がかった、透明感のあるワインレッド。ピノ・ノワールらしさはある。香りは、グラスに注ぐ段階からうまそうなやつがにおいたってきて、気持ちが高まる。若干コーヒーっぽさの混じったチョコレート+梅っぽさのある果実香がたっぷりとやって来る。若そう。
 
口に運ぶと、ややアセロラっぽい赤系果実の甘味と酸っぱさが来た後、カフェオレっぽいコク、ざらざらした舌ざわり、それから酸味と関連性のあるタンニンがばさっと感じられた。コーヒーっぽさから、ブルゴーニュ赤(の、そんなに高級ではないものにありがちな)革製品みたいな香りに通じるところもある。これはマルサネなので、それを欠点だとあげつらうのは酷な話だろう。グロ・フレールほどではないけれど、太いゴシックフォントのようなブルゴーニュ赤だけど、いいんじゃないでしょうか。甘酸っぱさも含め、得体のしれない新世界のピノ・ノワールやローヌなどに接近しすぎていない感じがある。まあまあ「らしい」ワインだと思う。
 
※翌日。少し酸味が強まって、バランスとして飲み心地の一般的なブルゴーニュ赤に近づいた。それだけでなく、すこし薔薇のニュアンスや香水のニュアンスが強まり、軽いながらも華のある飲み心地に。好みじゃないけど、こういうの立派な感じがしていいよね。ジュヴレ・シャンベルタンっぽさがへたにあったら、こうはなっていないかもしれない。そういえば、シルヴァン・パタイユのマルサネも香水っぽさの強いワインだった。これは偶然か必然か? ちょっと興味の沸くところ。
 

【2302】Feudo di Santa Tresa Cerasuolo Di Vittoria Organic 2018

チェラスオーロ ディ ヴィットリア オーガニック 2018 フェウド ディ サンタテレサ
 
このワインは、チェラスオーロを名乗っているシチリアワイン、DOCG。シチリアにはDOCGのワインが少なく、それでいてチェラスオーロはイタリアの良質なロゼワインのカテゴリ名。さあ、どんなワインなんだろう?
 
まず抜栓。あれっ?これ色が濃いぞ? 少なくともブルゴーニュピノ・ノワールなんかよりは明確に濃いワインレッドで、ロゼだなんて絶対に言えない。ということは、チェラスオーロって実はロゼじゃなくても構わないってこと? 香りは、梅干し系の酸っぱそうな香りがぷん、と来るぐらいで特異的なものは感じない。
 
口に運ぶと、おお、穏やかな果実味とふっくらとした飲み心地、タンニンはとげとげしくなく、適度な甘味は酸味と一緒に口のなかに広がっていく。なんだか飲み心地の良い赤ワインだぞ? えぐみなどなく、コーヒー系のコクで攻めてくるでもなく、とにかくおおらかな果実味、その膨らみと新鮮さが印象的だ。イタリアの旨安果実系であるモンテプルチアーノ・ダブルッツォたちと比較すると、こちらのほうがボリューム感があり、伸びやか・おおらかな感じがある。同じく安いとはいえないけれども果実系であるドルチェットと比較すると、質の良いドルチェットほど風味のきめの細かさがない反面、質の悪いドルチェットよりも彩りのある飲み心地なので、同価格帯のドルチェットよりは優位といった印象だ。そうか、フェウド・ディ・サンタテレサか、ここはちょっと覚えておいて総当たりしてみようかと思う。
 
※翌日は、昨日ほどのふっくら感はなくなったが、値段に比較して良いネロダヴォラだった。なんというか、付き合いやすいやつだ。つっけんどんなシチリアワインが欲しい人には向いてないかも(そんな人っていったいどれぐらいいるかはさておき)。