北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2185】Jean Chartron Bourgogne Vieilles Vignes Pinot Noir 2018

 
ドメーヌ ジャン シャルトロン ブルゴーニュ ピノ ノワール ヴィエイユ ヴィーニュ 2018
 
このワインは、見たことも聞いたこともない作り手によるブルゴーニュ平格赤。全く前評判は不明。いったいどんなワインなんだろう。
 
まず見た目。グラスに注ぐ時には、なんだかショッキングピンク~パープルみたいな色にみえたけど、注ぎきってしまうとやや暗いルビー色、ブルゴーニュ赤としてはやや黒っぽい色をしているようにみえる。香りは、ブラックチェリーの香りがしっかりと漂い、そこに木の枝のような、オーガニックな香りが混じっている。そう、切り株ではなく木の枝。少し方向性が違えば杉のような香りと解釈しそう。
 
口をつけると、コーヒーのようなコクをかなり強く伴っていて、ちょっと新世界っぽい仕立てだ。ブルゴーニュ赤のなかでも、チリなどのピノに近いほうじゃないか。それにしても木の枝の香りが強いワインだ、そびえたつ大木の横でワインを飲んでいるような気分になる。味も濃い。チリっぽいけどここまで森の深いチリワインは記憶にない。飲み進めると、果実味はザラザラとした舌触りを伴ったマイルドな感じになって、少し和菓子の趣がある。香りも相まって実は和菓子っぽいピノ・ノワールかもしれない。ただ、なぜか今回はアルコールがきついと感じて早々に呑むのをやめた。自分が弱っていたのか、それともワインがきついのか。翌日はどんな姿になっているだろう。
 
※二日目になり、革のような香りが木の枝の香りにあわさってきた。でもって、やっぱり濃い、すごく濃い。それでもブルゴーニュ赤平格らしさは感じられる。濃いくちなブルゴーニュ赤平格だ。
 

【2184】Domaine Bernard Millot Meursault Les Petit Charrons 2018

ムルソー・レ・プティ・シャロン[2018]
 
このワインは見たことも聞いたこともない(ブルゴーニュ南部、白ワインの名醸地である)ムルソーの作り手がつくっている村名格のムルソー。「レ・プチ・シャロン」という畑名は一級のようにみえて村名格で、購入したお店の解説によれば「一級グッド・ドールにほど近いグラン・シャロンに隣接し、レ・ルジョの下に位置する人気畑」とあるけど、はじめて知った。とはいえムルソームルソー、今日はムルソーが飲みたくて仕方なかったのだ。飲むぞ。
 
まず見た目。あまり濃くない、控えめなゴールド色。イタリア品種でいえばリボッラジャッラあたりと見まがうような。しかし香りは……バタークッキーだ!それと蜂蜜クッキー。その後ろから花のような爽やかな香りが伴ってくる。おお、ムルソーしてるやん!やったー!(そういえば、リボッラジャッラもナッツっぽかった気がする。久しぶりに買ってみようかな。)
 
口に運ぶと、バターの風味がしっかり来る。ナッツでもある。ワインには酸味がかなりしっかり伴っていて、そうしたバターやナッツと表裏一体にしっかりとした酸、それとミネラル風味がくる。グラスの香りに立ち返ると、バターやナッツにミネラルな雰囲気が加わって「立体的」とか口にしてしまいそうな雰囲気だ。ただ、ここでいうミネラルはピュリニーモンラッシェ一級にありがちな大理石系より、いくらか石灰岩系に傾いている。そうしたわけで酸もちょっと炭酸っぽい。飲み進めると、酸が少し落ち着いてきて一層おおらかでコクのある、ムルソーという地名にふさわしい飲み心地になってきた。まさかね、有名とはいえない作り手で村名格でここまでやってくれるとは。びっくりしてしまった。明日も楽しみにしてみよう。
 
※翌日。香りが落ちてしまった! 味わいは昨日にかなり近く、特にバターとナッツは温存されている。が、酸も弱くなって味わいの面でもいくらかの衰弱が。この作り手のムルソーは1級を買ってあるので、そちらも初日に半分以上を飲んでしまおうと思う。それと長期熟成には回さず、やや早飲み体勢で行ってみよう。
 
 

【2183】Chateau Pesquie "Quintessence" Blanc 2017

 
シャトーペスキエ カンテサンス白
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
このワインは、ローヌで最近あてにしているシャトーペスキエがつくる少し格上の白ワイン。品種はルーサンヌとクラレットとのこと、正直このあたりの品種のことはよくわからないし、ワイングラスをどうすればよいのかもわからない。わからないのでリースリングと同じグラスでやってみることにした。
 
まず色。予想以上に黄色っぽくて、「山吹色を少し薄めたような」色合いにみえる。香りは温度が低すぎるためか、初手ではあまり感じられない。
 
口に含むと、まず来たのはパパイヤ。パパイヤから嫌な風味を抜いたような、それかパパイヤを桃に近づけたような、リッチでコクのある果実味が来た。柑橘に譬えるより、充実した果肉を持った果物を連想したくなる味だ。酸味は後味あっさり、さらさらとしている。酸味の重要なシャルドネとも、揮発性のある爽やかさのソーヴィニヨンブランともはっきり方向性が違う。面白いワインだ。飲み進めると、黄桃から白桃へと雰囲気が変わって華やかさが宿ることもあるし、目立たなかった柑橘っぽさ、夏みかんのような酸味が幅をきかせる瞬間もある。単においしいだけじゃなく一定の複雑さを含んでいる。好みではないけれども可能性を感じる対峙だった。
 
※二日目は、初手から心地よい黄桃-白桃系の香りから、やはりコクのあるじっくり系ワインとしていただいた。総合的にみて得手な品種ではないけど、手ごたえを感じる一本だった。
 

ワインセラーが壊れた!

 
昨日の夜、ワインセラーから「キーン」「ビーン」という音が聞こえると嫁さんから話があって、行ってみると「キーン」「ビーン」と確かに聞こえていた。この音がちょっと面白くて、特定の方向ですごく聞こえるけど、他の方向ではあまり聞こえない。音の分布からして、音がコーン状に広がっているのがよくわかり、指向性の高い音の出方をしているのがみてとれた。
 
とてもじゃないけど、こんな変な音のするセラーにワインを置いておけない。大急ぎでなかのワインを避難させて翌朝を迎えたら、セラーはこと切れていました。使った年数は11年ほど。まあだいたい頑張ってくれたんじゃないでしょうか。
 
壊れたセラーは我が家にやってきた最初期のセラーで、中国製の6本しか入らないやつで、名前は確かデバイスタイル
 


 
2021年現在、デバイスタイルで検索してもこういうワインセラー然としたデザインのものしか引っかからない。でも2010年時点ではもっとスタイリッシュな黒い箱の6本入りが売られていた。小さくて軽く、どこにでも据え置けて、同じデザインのセラー同士で重ね置きができたので重宝したけれど、現在デバイスタイルの商標がついたセラーはそうもいかない。でもってこの価格帯のセラーの耐用年数とか考えた時、10年も使えばそろそろ危ない感じがするので、使い切りを前提に、この箱にはイタリアワインやちょっと良いボジョレーなんかを詰め込んでいた。
 
で、ワインを避難させる時間があったのは良かったんだけど、この7月の頭にワインが路頭に迷うのは結構困る。しかもつい最近、3000円台のワインがいっぱい入ったワインセットを注文してしまったばかりだったので、居場所のあいまいな中堅ワインが10本以上転がっている異常事態が発生してしまった。これらのワインを越冬ならぬ越夏させるのはきっと無理。へへへ、飲んでしまうしかない。
 
おかしいな、セラーが壊れて悲しいはずなのにオラワクワクしてきたぞ。そんなわけで当分の間、この『北極の葡萄園』は登場するワインの平均価格帯が上昇します。今後ともどうぞよろしくお願いします。
 

【2182】Domaine Michel Lafarge Volnay 2016

 
ミシェル・ラファルジュ ヴォルネ 2016
 
このワインはヴォルネでは頼りにしている作り手のひとつ、ミシェル・ラファルジュのもの。ただしこれは村名格、一級ではない。この、一級ではない村名格のヴォルネっていいといえばいいけれども驚嘆するほどじゃないってイメージがある。ラファルジュが作ってもたぶんそれは変わらないように思う。
 
まず見た目。ブルゴーニュの赤としてはすごく普通の、少しオレンジ色がかった薄目の赤。で、香りを確認すると、初手では薔薇の香りがぶわーんとする。すぐ後には桜の香りも。あれっヴォルネってこんなに派手な花の香りってあったっけ? と不思議に感じる。
 
口をつけると、さくらんぼ風味が炸裂し、飲み心地はさすがにヴォルネだけあって軽め。サクランボ、薔薇、桜の香りの向こう側からローソクのような有機系・アルコール系の香りが漂ってくる。最近飲んだ他のワインとの比較でいえば、プス・ドールのヴォルネ一級カイユレ2009との比較では果実味がちゃんと中空までしっかりあって、プス・ドールのあれが一大弱点であることがわかる。リシャール・マニエールのブルゴーニュ赤と比較すると、森っぽい香りとジャムっぽい果実味の迫力で劣る。では、そんななかでこのワインの取り得は何かと言ったら……なんだろう。軽さだろうか。ヴォルネだから軽さが身上ってのはわかるけど、実のところ、ラファルジュのヴォルネはよそのヴォルネ(たとえばレイヤンヌ・エ・パスカルとかダンジェルヴィーユとか)に比べると、そんなに軽々してる感じじゃなかったりする。あるいは早飲みのせいなのか、あるいは2016年がそういうヴィンテージなのか。
 
こういうときは、しばらく待ってみるしかあるまい。しばし放置。放置してもやはり、薔薇と桜の香りが炸裂している。あれっヴォルネってこういうワインだったっけ? これはこれで派手な飲み心地ではあるけれども。ところが気が付くと飲み心地がどんどんよくなってきた。飲むときの抵抗感がぬけてくるというか、摩擦ゼロ、酩酊も微小な感じで飲めてしまう。あれっこのワイン、飲めば飲むほど(良い意味で)軽くなっていくぞ? 気が付くとだいぶ飲んでしまっていた。怖いワインだ、風味絶佳な一級とはまた違った魅力があり、良い経験となった。
 
※翌日に残りを飲んだけど、昨日ほどには軽くなかった。なんにせよ、このヴォルネはすこぶる飲み吟醸だったので、ワインが好きな人とワイン以外の話題で談笑しながら飲むとさぞ気持ち良いだろう。
 

【2181】Cusumano Cabernet Sauvignon Terre Siciliane IGT 2018

 
クズマーノ カベルネソーヴィニヨン 2018
 
このワインは、シチリアで安くてうまいワインをたくさん作っているクズマーノのカベルネソーヴィニヨン。そのなかでも特別に値段の安いやつで、そのためかヴィンテージが記されていない。でもって、黒いボトルに黒いラベル、とにかくシンプルだ。コルクではなくスクリューキャップ。安ワインらしい旨さを期待しましょう。
 
スクリューキャップをあけてグラスに注いでみると、まずまず暗く、濃い赤ワイン色。で、香りは煮豆みたいなやつに加えて強烈にアルコールが香ってくる。その後ろからお線香だ。全体的に風味がごつい。
 
口をつけてみると、カベルネソーヴィニヨンについ期待したくなるなめらかでミルキーな口当たり。その後からきつめのタンニンと、安ボルドーに比較してごつい果実味と酸味がやってくる。果実味由来の酸味と果実味は、梅・プラム系を想像させるところもある。アルコールは13%というけど、結構きつい。それでもシチリアの安カベルネソーヴィニヨンとして期待どおりの性能を発揮している。
 
※翌日は、昨日よりも飲み心地がやわらかくなって親しみやすくなった。ちょっと土くさくなったかもしれないが、悪い安ワインにあるような、えぐい変な香りに陥る度合いも少ない。このワイン、お買い得ではないか?
 
※三日目、ちょっと酸味が勝っているかも。ということは二日で飲むのが一番だったか。このワインなら二日で飲めなくもないけれども。