北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2061】Aires Andinos Chardonnay 2019

 
アイレス アンディノス シャルドネ 白
 
 このワインは、スペイン製の安いシャルドネ。何かのセットに入っていたのだったと思う。スペインは暑くなっているのでこのワインもきっと南国系シャルドネじゃないかと想像。
 
 グラスに注いでみると、まずまず薄い色のシャルドネ。安シャルドネ然としている。香りは、フルーツ缶詰の汁のような甘い香りに、ちょっと台所洗剤っぽいすがすがしさが混入するような、まさに予想通りの南国シャルドネ風。チリのシャルドネって言われたら必ず騙されそう。
 
 口をつけると、香りに比べると爽やか……と思いかけたところで豊満な果実味がちょっとべったりした甘味とともに来た。甘味は、酸味と結びついてかんきつっぽくもあるし、ニッキ水みたくチープな感じもする。酸味が弱いため、かんきつよりもニッキ水が勝り、腰がふらついている。ワインはかなり冷えているはずなのに、それでも腰がふらついているのは良くない白ワインの証拠。そのくせ飲み疲れてくる。まったく良くありません。

【2060】Calera Selleck 2013

 
カレラ セレック 2013
 ※リンク先はヴィンテージが異なります
 
 ブルゴーニュピノ・ノワールを巡る旅の終着駅として、何が今飲めるのかをいろいろ考えた結果、選んだのはカレラのワインのなかでもトップクラスの品のひとつ、セレック。なんでカリフォルニアなんだと言われたら「だってコルトンの次に飲めそうな飲み頃の特級が我が家になかったから」。でも自分の知る限りではカレラのピノ・ノワール(の上位)はブルゴーニュっぽい、というか超ブルゴーニュ(またはブルゴーニュシミュラークル)って感じがするので、これを最後に選んで考えられることもあるんじゃないかとか。
 
 まず、見た目は普通のピノ・ノワール。あまり茶色がかっておらず、グラスに注ぐ時には少し蛍光色っぽいかな?という印象も受けた。注いでしまった後は、暗すぎず、薄すぎないワインレッドと感じる。香りは、まず抜栓してグラスに注ぐ段階で猛烈にチェリーな香りが広がった。うわー凄くわかりやすい香りだぞ。グラスに顔を突っ込んでみると、そのチェリーの奥から、バニラとローソク香がむんむんと来る。バニラの横に、苔の生えた切り株みたいな香りも伴っているけれども、まずは、享楽的な香りが怒涛のようにやって来るのが目につく。
 
 口をつけてみると、口当たりがまず柔らかくて、包容力がある。まったりとした口当たりで、上顎に、ふんわりとした甘さ、イチゴミルクみたいな甘さを伴っている。カレラでは比較的飲んでいるミルズと比較すると、こちらのほうが鷹揚でふっくらしている。ミルズの貝殻みたいな雰囲気を減らして、カリフォルニアらしさを増強したらこうなる、といった感じだろうか。タンニンはほどほどにあるけれども出しゃばることなく、イチゴミルクみたいな甘さと相まって独特の後味とコクを生み出す一助となっている。文句なしに美味い。
 
 少し時間を置くと、ローヌの赤ワインみたいな凄い香料の香りがこみあげてきた。いったい何なんだ。ちょっとエキゾチックでもある。ブルゴーニュ赤に求める資質かどうかはさておき、面白いワインなのは間違いない。高騰してしまった今はリピートする気になれないけど、昔の価格帯ならこれは納得できる。
 
※翌日は、前日に比べて少し勢いが落ちて、ふんわり感が乏しくなった。そのかわり、胡椒系のスパイシーな側面が強調されるようになった。初日のほうが美味かったが二日目も面白い。そして就寝時間になってもずっと強烈な果実の後味がのどの奥に残って気持ち良かった。秀逸。
 

【2059】Domaine Jacques Prieur Corton Bressandes Grand Cru 2013

 
ドメーヌ・ジャック・プリウール コルトン・ブレッサンド グラン・クリュ [2013]
 
ブルゴーニュの赤ワインを久しぶりに飲んでみる旅の終わりとして、2013年産のコルトン・ブレッサンドを飲んでみることにした。実はコルトンは全く手を付けたことがない。
 
まず見た目。やや暗めの赤茶色のワインレッド。ブルゴーニュ産のピノ・ノワールにしては黒ずんだ色合いだけど、濃すぎるというほどでもない。香りを確かめると、森の切り株系の香りとチョコレートがいきなりぶわっと香り立ってくる。ろうそく系の揮発臭、夕張メロン系の甘い香りも伴っていて、興味深いことに、それらの香りがうまく融合しているというか、ガチャガチャした印象を受けない。
 
口をつけてみると、はじめはチョコレート、そこから徐々に口のなかに広がっていく果実味!この果実味が口のなかに広がっていくさまに、ブルゴーニュ赤のなかでは久しく感じていなかった、雄大な広がりを伴っていてスケール感がある。こういう感覚を長いこと忘れていた!これまで飲んできたヴォルネやモンテリにはこれはなく、どちらかといえばコート・ド・ニュイのラインナップに近い飲み心地だ。飲み心地に充実感と爽やかさの両方があって、そこに摩訶不思議な香りがずっと寄り添っている。はー、コルトンってこんなにいいものなのか。2013はオフヴィンテージだと思っていたけどこれは驚き。
 
※二日目も、充実感、雄大さを損ねることなく屹立している。飴っぽさ、香料っぽさが高まってきた。結果として二日目のほうが良かったところをみると、2013でも結構頑張る力があったということだろうか。やるじゃんコルトン。
 

【2058】Comtes Lafon Monthélie les Duresses 1er cru 2012

コント・ラフォン モンテリ一級 レ・デュレス
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
このワインは、ムルソーで高いワインを作っているコント・ラフォンが手掛ける赤ワイン。場所はモンテリというマイナーな土地で、いちおう一級ながら、三年ほど前に飲んで土っぽさの豊かな表現に驚いたことがあった。ブルゴーニュ赤ワインをなぞる旅第三弾はこのワインをチョイス。
 
まず抜栓。なかなか立派なコルクに「コント・ラフォン モンテリ一級」としっかり印字してある。ちょっとうれしい。ワイングラスに注いでみると、少し茶色が勝ったダークな赤茶色。ワインのあしが思ったより長く、グラスのへりはべとべととしている。透明度はまずまず高い。香りは、意外にもぐっと迫ってくるチョコレート系。ただ、グラスに鼻を突っ込んでしばらくすると苔や日陰の植物などを掘った時のような、すごく湿った土臭い香りが立ち上ってきた。生き物、という感じがする。あるいは、なぜかここで古タイヤを連想した。とりあえずいい調子だぞ。
 
ところが口に含むと、甘さ控えめ、苦みと渋みのしっかりとした、えらく生真面目な赤ワインがやってきた。最近飲んだブルゴーニュの一級はどちらもモンテリの隣、ヴォルネの一級だったけど、両者に比べるとワインの重心が重く、生真面目だ。それでいて香りはますます土っぽさを帯びていき、生き生きとしている。やがてアルカリ土類金属を連想させる土っぽさ(モルゴンぽさ、と言い換えたほうが妥当かもしれない)が全開になって土砂のようなにおいがしてきた。およそチャーミングなワインとは言えないが、ブルゴーニュ赤ワインという体系のなかではこのようなワインは珍しい。チャーミングではないからおよそ万人受けする品とは思えない。ブラインドで飲んだら、まかり間違ってアルゼンチン産の1500円ぐらいのマルベックのブレンドワインと答えてしまうおそれもあるかもしれない。それか、クリュ・ボジョレーのモルゴンあたりとか。ブルゴーニュ赤ワインという曼荼羅のなかでこの位置にある、というイメージで捉えるものなのだと思う。
 
※翌日。いくらかまろやかになって果実味に親しみが持てるようになった。それでもゴボウをかじっているような気分になることしきり。コント・ラフォンともあろうものが、わざわざゴボウのようなワインを作っているのだから、モンテリは土っぽいアペラシオン、という理解でよさそうだけど、これは一般受けしなさそうなワインだ。少なくとも、高級ワインにこういう趣向を期待する人は少ないはずで、あくまで「モンテリを理解するための教材」という印象は変わらない。それにしても、二日目のしり上がりの展開をみるに、このワインは開けるのが早すぎたんじゃないか。コント・ラフォンともなればモンテリといえども長命、ですか。
 

【2057】La Pousse d'Or Volnay 1er Cru En Caillerets 2012

 
プス・ドール ヴォルネ 一級 エン カイユレ 2017
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
前回、ブルゴーニュ赤ワインの散歩道をはじめようと思ってラファルジュのヴォルネ一級・シャトー・ド・デュック2013をあけてみたけれど、その印象が薄れないうちに地域やヴィンテージの共通するワインを飲み続けてみる。今回は第二弾、プス・ドールが作る同じくヴォルネ一級・カイユレで生まれる2012のワイン。2012は2013よりも作柄がマシなヴィンテージといわれているけど、プス・ドールはラファルジュに比べるといまいちなメーカーかもしれない。果たして、どうなるか。
 
まず見た目。思ったよりも濃いワインレッドで、暗さを伴っている。少なくともラファルジュのヴォルネ一級・シャトー・ド・デュック2013に比べるとずっと暗くて濃い。香りは、やはり夕張メロン系の香りがぷんぷんとしていて飲み頃感が漂う。それとチョコレートたっぷりにアセロラのような赤系果実、森の切り株のような香り(というよりプス・ドールのカイユレにいつもついてまわる香り)を伴う。
 
口に運ぶと、軽々とした飲み心地でまさにヴォルネ。熟成しつくしたシャトー・ド・デュックに比べると、かつおだしのような老成ブルゴーニュの雰囲気ではなく、まだまだ果実味がしっかりしていてニュニュっとした口当たりを初手から伴っている。みようによってはヤクルト・ヨーグルト系とも解釈でき、ブルゴーニュの赤としてはこういう乳酸・乳飲料系の口当たりを嫌う人もいるやもしれない。夕張メロンのような香りが、もう少しトロピカルフルーツ寄りに変わったり、生ハムメロンっぽくなったりする瞬間もあり、その香りの揺らぎがなかなか魅せてくれる。プス・ドールのカイユレは、いい時はなかなか良いけれど悪い時はあまり頼りにならないものだと理解しているけれど、2012は結構いい線いっている。ラファルジュのシャトー・ド・デュック2013に比べると元気かつ風味のバリエーションも豊かで良い感じだった。
 
※二日目は、もう少し落ち着いた雰囲気になってしまったが、香料系の食べ物っぽくない香りが前景に出る場面があって面白かった。先日のアンリ・ボノーを一瞬思い出すような。2012年であること、カイユレであることのおかげでかなり善戦してくれたのかもしれない。えらいえらい。
 

【2056】Domaine Michel Lafarge Volnay Clos du Chateau des Ducs 2013

 
Volnay 1er Cru Clos Du Ch.des Ducs (Monopole) Michel Lafarge
※リンク先はヴィンテージが異なります
 
ここしばらく、ブルゴーニュの赤ワインをある程度系統的に、比較しながら飲めるように努めていなかったと思う。そこで、比較を目指して関連のありそうなワインを順番に飲み比べていこうと思う。で、スタート地点にふさわしいワインはないものかと手持ちを探したところ、「コート・ド・ボーヌの2013年の赤ワイン」が見つかった。コート・ド・ボーヌの2013年は世に聞くバッドヴィンテージ。なら、年を取っていてもおかしくないでしょう。ものはミシェル・ラファルジュが作っているヴォルネ一級の単独畑、偉そうな名前がついているけれども実態としては「ヴォルネ一級のラ・ヴィラージュ」に相当するもの。
 
まず色は、ちょっとオレンジ色っぽくかなり 香りは、ブランデーと夕張メロンの香りがすごい勢いでこみあげてくる。それと黒系果実のジャム。なんでか赤系ではなく黒系の果実を思わせるものがある。でもって、すごいフェノール系化合物の香り。いい香りで、複雑だ。チョコレートやニスみたいな香りもある。うまそう。
 
口に運ぶと、かつおだしのような風味があって既に古酒の趣。このボトルは結構良い環境で保存していたので、それでもこれだけ老成しているとしたら、やっぱり2013のコート・ド・ボーヌは難しかったんじゃないか、と思う。ある程度うまく年を取ったワインは夕張メロンを基調としたフェノール系化合物の香りがぷんぷんするけど、これはまさにそんな感じ。冷やしすぎても、ぬるすぎても美味くなくて適温が狭くなっている。条件さえ整えば、香りのバリエーションが豊かで滋味豊かさの名残りすらあるワイン。明日にもいちおう残すけれども半分より多めに飲んでしまうことにした。間違いなく、おいしい盛りは今日の早い時間のうち。
 
※二日目。ボーヌ系のよくできた赤ワインらしい、果実味と森の下草らしさのあるワインになったが、前日のメチャクチャなフェノール全開の雰囲気は落ちてしまった。悪くはないし昨日より若々しいとすら感じるけれども、昨日のほうが香りのバリエーションは豊かで思い出深かった。二日目は、コート・ド・ボーヌの6000円程度(それも2020年現在の)のワインでも実現できるレベルで、良いとは言えない。