北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2358】Domaine du Beauregrad Maranges 2019

ドメーヌ・デュ・ボールガール マランジュ ルージュ 2019
 
ブルゴーニュの高騰著しいこのご時世に、信じられない価格のワインを発見した。マランジュとはいえ、コート・ドールの村名格が2000円、ヴェリタスの特殊な販売日の場合は2000円すら切っているというワインだ。ワインの値段は正直なのでべらぼうに旨いってことはないだろうけれども、ものは試し、飲んでみることにした。なお、同じ銘柄の一級畑も確保してある。そっちも格安で一級のくせに2600円ほどだったと記憶している。さあ、飲んでみよう。
 
まずは抜栓。くずコルクなんだけど、半分ぐらいまで染み出した跡がある。不吉だ。でもいい香りがしたような気がする。続いてグラスへ。うん? なんか色が濃いぞ? そして不透明だ。結構長い期間立てておいたつもりだったけれども。色だけだったら、ローヌの赤ワインだと言って出しても騙されちゃいそうだ。香りは……だめだ。閉じている。ちゃんとしたブルゴーニュグラスに注いでも、香りがひきこもっていて出てこない。やべえ。
 
口に運んでみると、はじめにきな粉のような粉っぽい風味が口のなかに広がる。典型的なブショネではないけれども、なんか不穏な雰囲気だ。で、味わいはピノ・ノワールのそれではない。もっと濃くて、新世界のカベルネフランのようだ。少なくともここからブルゴーニュピノ・ノワールを連想するのは無理(だし、新世界のピノ・ノワールともまた違う)。どくどくとした果実味は、肉やベーコンを伴ったグルナッシュ風でも、ピーマンを伴ったメルロー風でもなく、杉の木や煙突を伴ったカベルネソーヴィニヨン風でもない。連想として一番近いのは、やっぱりカベルネフランから草餅っぽさを除去し、なんかもっとごってりした風味を足したようなもの。ここまで果実味に頼ったどくどくワインなのに、そのくせ、後味の段になると妙にそれが軽く感じられる。後味にタンニンがばさばさっ残る感じが酸味よりも優勢で、ちょっと亜鉛サプリメントっぽい苦み?を伴う。
 
なるほど値段は正直で、これは典型的なブルゴーニュピノ・ノワールっぽくない。内容がイカサマでないと信ずるなら、この作り手はなんだかわけのわからないものを作っている気がする。イメージとしては、ひと昔前のグロ・フレールの作ったピノ・ノワール。ここまでさんざん良くない風に書いたけど、濃い口カベルネフランの互換品として割り切って飲むぶんには存外悪いワインではなく、価格相応のクオリティとは言えるかもしれない。ただ、こういうワインがコート・ドールの看板ぶら下げて売っているのは異質なことだ。しかし、飲み進めるうちにどこかで似たようなワインを飲んだ記憶がある……と思い始めてきた。しばらく考えて、これはアンヌ・グロの品に似ていると気づいた。あちらより、やや作りは粗いが似ている。だからああいうブルゴーニュが好きな人にはこのボトルはもう少し高い評価になるとみた。