北極の葡萄園

呑んだワインをひたすら記録しています。

【2397】Domaine de La Pousse d'Or Volnay 1er Cru En Caillerets 2015

プス・ドール ヴォルネ エン・カイユレ 2015
 
高騰著しいブルゴーニュ、なかでも花形の一級や特級は軒並み値上がりしているもの。そうしたなかでほとんど値上がりしていないのが、このプス・ドールのヴォルネ一級カイユレ。カイユレはヴォルネのなかでは最強格の畑とみなされ、プス・ドールはなかでも良質の区画を握っているといわれている。ところが現在の経営体制のなかで、このワインはろくに値上がりしていない。カイユレを定点観測するには良いかと思い、一時整備してきたけれども、果実味になんだかスカスカしたところがあってどうしても好きになれないので、カイユレの更に限定版である、60ヴーヴレという品を除いて全廃することになった。これは通常型カイユレの最後の一本。2015とヴィンテージそのものは良く、本来なら2026年ぐらいに抜栓するのがいいのかもしれない。でも今までの経験から、ここのワインは早飲みしたほうがマシだと思う。今回はその前提での挑戦。抜栓して二時間ほど放置してから実際に対峙してみた。
 
グラスに注いでみると、僅かに蛍光色を伴っているかもしれない。が、ピノ・ノワールとしては黒々としていて透明度は低い。随分と黒い品種を使っているんだろうか。香りは、梅系のものが少し香るけどやはり大したことはない。一級としてはがっかりレベルだ。
 
口に運ぶと、これはタンニンがこなれていない。ばっさばっさとタンニンがあり、苦みもあり。果実味がないわけではないけれども、それをずっと凌駕する苦さとタンニンがあって楽しめるコンディションとは言えない。してみれば、カイユレだけあって遠大な熟成に焦点づけられていて、若いうちは到底飲めないつくりなんだろうか? しかし、プス・ドールのカイユレの場合、果実味になんだかスカスカしたところがあるため、熟成コースに乗せると未来において骸骨みたいなワインになる予感があって、今回もそういうわけで7歳のカイユレをあけてしまったのだった。他のメーカー、他の畑なら確かに熟成させるべきだろう。でも、こいつでそれを目指すのは無理ってもんじゃありませんか?
 
夕食。シチューや軽い豚肉料理と一緒に。すると、果実味の弱さがカバーされて、料理に合った姿をみせてくれる。「ワインは食事と一緒に楽しむものである」という原点に立ち返るなら、これは日本家庭の軽い肉料理とじつに美味く釣り合ってくれる。それはそれでいいことに違いないのだけど、かりにもヴォルネ一級、その筆頭格と目されるカイユレが、我が家のシチューと仲良しこよししているってどうなんだ、という疑問がなくもない。ブルゴーニュ公式のヴォルネ(イ)のページに行ってみると、「赤: ビロードのように柔らかく女性的で、凝縮したアロマとよく釣り合っている。それゆえじっくりとローストしたり、照り焼きにした洗練された鶏料理と相性がよい。プルミエ・クリュには野鳥のシチューやじっくり蒸し煮、または単にローストしたものが、この偉大なワインの肉づきのよいテクスチャーや官能性とよく合う。さらに面白い組み合わせはクスクス、肉を使ったタジン鍋、しゃぶしゃぶの胡麻だれなどである。Volnay の力強さは香り豊かなチーズともよく合う。」と書かれている。なるほど、このボトルには、柔らかく女性的で凝縮したアロマも、肉付きの良いテクスチャーや官能性も足りないし、だから我が家の安い鶏肉シチューと釣り合っているようにみえる。ところが、ボトルの底のほうになると結構な底力をみせ、余韻の長さ、果実味の充実がようやくながら揃った。このワイン、底のほうだけ一級然としているのか? これがボトル全部だったらいいのに。明日のぶんはボトルの比較的上のほうなのでさてどうなるだろう?
  
※翌日、ボトルの上半分ぐらいをいただいた。すると昨日の底のほうにはやはり敵わない。昨日のスタート段階よりはだいぶいいのだけど。いまどきは、一級未満の村名格や裾モノのブルゴーニュ・ルージュも結構な性能を出す時代なので、単純にこれを肯定することはできない。やはり難しいワインで、悪いヴィンテージならためらうし、2015のようなヴィンテージもそれはそれで難しい。じゃあ2018のような太陽優勢のヴィンテージは? 買うか? いやぁ、もうさんざんがっかりしてきたからやめようかな、ううむ。